物語編
第一章 第四五話 物語編
第一章 楽 と 苦
第四五話 時が早く進む と 時が遅く進む
〔最善の者が、最悪に窶し、艱難を引き受ける。
深淵の仕組を負う彼が、地獄の底を塞がなければ、
この世界が如何なるのか、汝らは解かっているのか。〕
〔甘過ぎる天界に惚け、苦過ぎる地獄に怯えて、
長過ぎる寿命を持て余し、交互に生れ変り続ける。
学びが少ない、悲惨極まりない、世界となるだろう。〕
〔少数が喜ぶ頂点から、多数が苦しむ底辺まで、
緩やかに移り変わる、世界を保っていられるのは、
汝らが貶める、彼の仕業だと、汝らは知っているか。〕
〔さらに、現在、この場には、訪れていないが、
いずれ、尋ねて来るだろう、彼の信奉者に告げる。
今も、隠れて聞いているなら、そのまま聴いておけ。〕
〔悪の限りを尽くして、彼を祀り上げる者達よ。
彼は、汝らの敵でないが、味方でもないと心得よ。
悪の頭と見なされるが、彼の中は大いなる空である。〕
〔彼は空ゆえ、他の者の如く、業に縛られない。
それゆえに、天国から地獄まで、自由自在に動き、
世の鏡となり、欲の移り変わりを、悉く映し続ける。〕