第二章 第三八話 対話編
CASE 才 の裏に 徳
マナミ 得を生み出す、才って、どういうものなの?
マサシ 才とは、欲を持って、欲を使い熟すことだよ。
欲は、深く修めるほど、才に変わっていくよ。
マナミ つまり、才を研き上げると、苦労するけど、
一旦、才を身に着けたら、得を生み出せるの?
マサシ そうさ、予め損を受けると、得が貯まるのさ。
マナミ 才を産み出す、徳って、どういうものなの?
マサシ 徳とは、器を以って、才を遣い熟すことだよ。
欲は、広く収めるほど、徳に換わっていくよ。
マナミ つまり、徳を磨き上げると、苦労するけど、
一旦、徳を身に着けたら、才を引き寄せるの?
マサシ そうさ、予め得を与えると、徳が貯まるのさ。
マナミ じゃ、欲を修め才となり、才を収め徳になる?
マサシ そうさ、欲になるほど、直接的に得を求めて、
逆に、徳になるほど、間接的に得を求めるよ。
マナミ う~ん、どうして、間接的に得を求めるの?
マサシ 真に、必要なものは、本人は解らないからさ。
マナミ そっか、自然に任せて、無理に求めないのね。
マサシ そう、見とめられるのは、徳が高い証なのさ。
マナミ ……………………!!
CASE 才 の先に 徳
サトミ 研き上げていく、才って、どういうものかな?
メグミ 才とは、先に損を受け、後に得を作るものよ。
サトミ 苦労して、才を培うほど、どうなるのかな?
メグミ 欲しい時に、欲しいものが、揃う様になるよ。
サトミ それなら、不要なものも、手に入るのかな?
メグミ 本当は不要、そんなものも、求められるのよ。
サトミ 磨き上げていく、徳って、どういうものかな?
メグミ 徳とは、先に得を与え、後に徳を創るものよ。
サトミ 奉仕して、徳を培うほど、どうなるのかな?
メグミ 要する時に、要するものが、揃う様になるよ。
サトミ それなら、不要なものは、手に入らないの?
メグミ 本当に必要、そんなものが、与えられるのよ。
サトミ 才なら、これが欲しいと、狙い澄ますけど、
徳ならば、どれでも良いと、受け容れるのね。
メグミ そうよ、本当に、自分のためになるものは、
得てして、本人は、分からないものだからね。
サトミ う~ん、それならね、才を研くんじゃなくて、
あたしも、徳を磨いておけば、良かったなあ。
メグミ うふっ、その才で奉仕をすれば、徳になるよ。
サトミ ……………………!!
CASE 守 と 破 と 離
サトシ 型を守ること、守って、どういうものかな?
アツシ 守とは、才を研くために、理に従うことだな。
サトシ 型を破ること、破って、どういうものかな?
アツシ 破とは、才が研かれると、理を破ることだな。
サトシ 型を去ること、離って、どういうものかな?
アツシ 離とは、徳が磨かれると、理を失うことだな。
サトシ それなら、もし、僕が、人気者になりたくて、
手品が、上手くなりたかったら、どうなるの?
アツシ 誰かに師事したり、独りで練習したりする。
これが、損をして得をする、理を守る段だな。
サトシ 才が研かれて、人気が出たら、どうなるの?
アツシ 当初の目的を成し遂げて、筋書きが無くなる。
これが、得して空きが来る、理を破る段だな。
サトシ 更に、人気を求め、練習したら、どうなるの?
アツシ それは、損して得する、新たな理を守る段だ。
サトシ もう、人気に囚われない、手品が有れば良い。
アツシ それは、損をして徳をする、理を去る段だな。
サトシ 破と離の違い、小さいようで、大きいんだね。
アツシ この違いが解る、君の徳も、相当に大きいぞ。
サトシ ……………………!!
CASE 徳のない才 と 才のない徳
サトミ 才と徳、どちらの方を、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 仮の得となる、才って、どういうものかな?
メグミ 才とは、欲する時に、欲する物を得るものよ。
サトミ 真の得となる、徳って、どういうものかな?
メグミ 徳とは、要する時に、要する物を得るものよ。
サトミ 才を重んじて、徳を軽んじると、どうなるの?
メグミ 徳のない才なんて、器用貧乏に過ぎないよ。
サトミ じゃ、欲しいものなら、引き寄せてしまうの?
メグミ そうよ、要らないものに、巻き込まれるのよ。
サトミ 徳を重んじて、才を軽んじると、どうなるの?
メグミ 才のない徳なんて、無用長物に過ぎないよ。
サトミ じゃ、要するものなら、引き寄せられるの?
メグミ そうよ、欲しないものに、巻き込まれるのよ。
サトミ 才だけでは、使い熟なせず、損を受けるし、
徳ばかりでは、遣い熟なせず、得を享けない。
メグミ そうよ、才と徳、そのどちらも、必要なのよ。
サトミ じゃ、徳を研きながら、才を磨いていくの?
メグミ うふっ、才を究めながら、徳を極めていくの。
サトミ ……………………!!