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物語編

第二章 第五十話 物語編

第二章     才   と   財
第五十話 人の気が巡る と 地の気が巡る

 

事実、彼の興した国では、彼に近いものほど、
自らに与えられたものを、喜んで与えようとする。
彼らは才や財に富むが、彼らの関心は其処にはない。

 

ある者は、財を蓄えるより、才を伸ばすこと、
又、ある者は、才を伸ばすより、徳を高めること。
徳の高い者ほど、外気より内気に、興味を抱くのだ。

 

外の気を、内に蓄えることに、興味を持つと、
有限の器をして、有限の歓びしか、感じられない。
彼らは、蓄えているようで、その実、漏らしている。

 

外の気が、内を流れることに、興味を持つと、
無限の道をして、無限の喜びすら、感じられよう。
彼らは、流しているようで、その実、満たしている。

 

すなわち、天下を巡る気は、有限でしかない。
小人が増すと、気が滞って、限界を感じ易くなり、
君子が殖えると、気が流れて、限界を感じ難くなる。

 

あらゆる闇が噴き出した、この乱世にあって、
その財を使い惜しむ者、その才を出し惜しむ者は、
その存在そのものが、天下に対して悪を為している。

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