物語編
第二章 第五五話 物語編
第二章 若 と 老
第五五話 良い方を見る と 悪い法を見る
〈これで、君と私とは、同志となったわけだな。
同じ命を掲げる者は、命を懸けて助け合うべきだ。〉
「承知、我が命を賭けることに、躊躇は有りません。」
〈では、君だけに、秘密の法を明らかにしよう。
君が修めるべき法だ、誰にも漏らしては為らない。
他に漏らせば、君に授けられた、命が消えるだろう。〉
〈精を漏らすほど、天に授かる、命は軽くなり、
精を尽くすほど、天に与えられる、命は重くなる。
乾坤一擲、精を持て余して、性に溺れては為らない。〉
〈精を練ると気に変り、気を練ると神に変わる。
神を練ると虚に還り、そのとき、人は不死となる。
この生と死を越える法こそ、君の師が伝える秘儀だ。〉
〈確か君も、師に見せられたことがあるだろう。
人の心は、其の奥において、互いに繋がっている。
自と他の別や、生と死の境は、仮のものに過ぎない。〉
〈実は、法徳も、この秘法を、探し続けていた。
生を見つめるものは、死も見つめないとならない。
彼は、斯く考えて、死を越えるために、師を招いた。〉
〈だが、君の師は、彼の招きに、全く応じなかった。〉