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物語編

第二章 第五七話 物語編

第二章     姓   と   名
第五七話 縦から銘じる と 横から銘じる

 

何時、何処に、如何なる天命が下ろされるか、
これから、何が起こるのか、もとから決っている。
早く迎えるか、遅く迎えるか、それだけ変えられる。

 

宿命とは、非情なものだ、誰も逃れられない。
逃げれば逃げるほど、積み重なり、心の罪となる。
宿命は、委ねるほど軽くなり、逃げるほど重くなる。

 

天命とは、絶対のものだ、誰か遂げてしまう。
誰も築かないと、誰かが気づき、世界の型を負う。
天命は、気づくほど強くなり、築かないと弱くなる。

 

師に代り彼に法を説く、これが我らの使命だ。
君が果さないときは、私が果すことになっている。
君が築きたいのか、私が気づくのか、どちらを選ぶ。

 

私が果すと答えると、彼は嬉しくも悲しい目をした。

 

ああ、この選択さえ、もとから決まっていた。
この使命は、誰より、君が果すことになっていた。
そして、君が躓いたときは、私が身代わりとなると。

 

〈ここまで、見事なほどに、宿命のままならば、
ここから先も、美事なまでに、天命のままだろう。
宿命を越えるのは、天命に委ねたとき、逆説的だが。

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