物語編
第二章 第五八話 物語編
第二章 人命 と 天命
第五八話 命を明らめる と 命が現われる
〈さあ、今から、君に、天命を明らかにしよう。
人事を尽していれば、何を聞いても諦められるが、
人事が尽きてなければ、何を聞こうと諦められない。〉
〈いいか、君には、師に殉じて、死んでもらう。
悪法も、また法なり、師と同じく、死んでみせろ。
潔く死を容れる様をして、彼に死の法を知らしめる。〉
〈その後、信念が揺らいでいる、彼を私が導く。
一足飛びに、彼の徳を越えるには、大いなる損失。
すなわち、師の命と君の命、大いなる犠牲が必要だ。〉
突如、無意識から、一つの可能性が浮き上がる。
当然の如く、老子からの使徒と、見なしていたが、
この男は、法徳に遣わされた、廻し者かもしれない。
彼の言を踏み固めて、頂まで攀じ登って来たが、
もし、彼が敵なら、谷に引き摺り落されただけだ。
奴らは、実に巧妙に、人の心の隙に潜り込んで来る。
「妙だ、言っていることが、良く分からないが。
あたかも、死んでくれと、言ったように聞こえる。」
〈違いない、型となるため、君の命を捧げて欲しい。〉
〈思い出してみろ、何も不思議がる必要はない。
これ以前にも、これと同じ選択を逼られたはずだ。
運命は酷である、いつも同じ選択を迫られるだけだ。〉