物語編
第二章 第六十話 問答編
マサシ 故事「胡蝶の夢」とは、どういうものですか?
アキラ 戦国時代、宋の国の荘子は、夢を見た。
夢の中で蝶になり、楽しく舞っていると、
自分が人間であることを、忘れてしまった。
しかし、目を覚ますと、やはり人間であった。
目が覚めた荘子は、このように考えた。
人が蝶になったのか、蝶が人になったか、
夢が現実なのか、現実が夢なのか解らない。
本当の存在は、区別がない、変化そのものと。
マサシ 胡蝶之夢(コチョウノユメ)とは?
アキラ 胡蝶之夢は、荘子が見ていた夢である。
夢で蝶となり、飛んでいたら目が覚めた。
人の荘子が、蝶となった夢を見ていたのか。
胡蝶の荘子が、人となった夢を見ているのか。
マサシ 夢(ユメ)とは、どういうものですか?
アキラ 夢とは、眠むると表れる、世界であり、
外が消えて、内に現われる、現実である。
夢を見ていると、夢の中に他が現れて来て、
夢から覚めるとき、夢の中の他が自らに移る。
マサシ 現(ウツツ)は、どういうものですか?
アキラ 現とは、覚めると現れる、世界であり、
内が消えて、外に表われる、現実である。
現を見ていると、我が外に他が現れて来て、
現から覚めるとき、我が外の他が自らに映る。