第二章 第六十話 対話編
CASE 夢 の裏に 現
マナミ 眠っている界、夢って、どういうものなの?
マサシ 夢とは、外が消えるとき、内に表れる世界さ。
マナミ 現の世界が消えると、夢の世界が現れるの?
マサシ そうさ、そして、その夢の世界を、現と見る。
マナミ 覚めている界、現って、どういうものなの?
マサシ 現とは、内が消えるとき、外に現れる世界さ。
マナミ 夢の世界が消えると、現の世界が表れるの?
マサシ うん、そして、その現の世界を、夢と見ない。
マナミ う~ん、良く解らない、どういうことなの?
マサシ それなら、君の夢の中に、僕が現れたとする。
夢の中の僕を、夢を見ている君は、どう見る?
マナミ 自分の外に居る、現実に居る人って、見るの。
マサシ 夢の中の僕を、夢から覚めた君は、どう見る?
マナミ 自分の中に居た、現実に居ない人と、見るの。
マサシ 今、君の現実の世界に、僕が現れているけど、
もし、この夢が覚めたら、どう見えると思う?
マナミ つまり、私の中に居る、現実に居ない人なの?
嘘よ、信じられない、そんなこと言わないで。
マサシ 僕が言うんじゃないよ、君が言っているのさ。
マナミ ……………………
CASE 夢 の先に 現
サトミ 昨日の夜ね、難しい問題を、解いていたの。
難しくて、解けなかったから、寝ちゃったの。
メグミ 問題を、考え続けていたら、寝ていたわけね。
サトミ うん、夢の中でも同じ問題を、考えていたの。
すると、あなたが現われて、解いてくれたの。
メグミ あなたの、夢の中の私は、私より頭が良いね。
サトミ これの、何が面白いかって、問題を解いたの、
夢の中は、あなたで、実際は、あたしだよね。
メグミ 確かに、あなたの夢の中の、わたしだからね。
サトミ あたしね、面白いことに、気づいちゃったの。
メグミ そっか、どんなことが、これから分かったの?
サトミ 夢に、現れるものは、潜在的な自分ってこと。
メグミ あ~ん、惜しいな、もう少し気づいて欲しい。
サトミ う~んと、何だろう、何に気づけば良かった?
メグミ 夢で、こうして、問題を解いていたんでしょ。
そこに、こうして、わたしが現れたんだよね?
サトミ うん、あなたが、問題を解いてくれたのよ。
メグミ ここで、わたしが、問題を解いてしまうと、
夢と一緒になるから、自力で現実を解いてね。
サトミ ……………………!!
CASE 夢 と 幻 と 現
サトシ 外を見ている、幻って、どういうものかな?
マナミ 幻とは、実体が有るって、外を見ることなの。
サトシ 幻を見ている、夢って、どういうものかな?
マナミ 夢とは、実感が有るって、幻を見ることなの。
サトシ 幻と見ている、現って、どういうものかな?
マナミ 現とは、実体が無いって、幻を見ることなの。
サトシ そもそも、自らの内側には、何が有るのかな?
マナミ 一元である、真の世界が、広がっているの。
サトシ それなら、自らの外側には、何が有るのかな?
マナミ 二元である、幻の世界が、広がっているの。
サトシ その幻に、実感を求めると、どうなるのかな?
マナミ その幻影が、真実に見え、夢を見てしまうの。
サトシ その幻の、実体に気づくと、どうなるのかな?
マナミ その幻影が、幻想に見え、現に覚めていくの。
サトシ じゃ、実感が有るから、真実とは限らないし、
反対に、実体が無いって、見抜くべきなのか。
マナミ そうなの、これこそが、世界の真実だったの。
サトシ そっか、良く解かったよ、凄く実感が湧いた。
マナミ そうなの、そういう時こそ、見抜くべきなの。
サトシ ……………………!!
CASE 現のない夢 と 夢のない現
サトミ 夢と現、どちらの方を、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 幻を見ている、夢って、どういうものかな?
メグミ 夢とは、実感が有るって、幻影を見ることよ。
サトミ 幻と見ている、現って、どういうものかな?
メグミ 現とは、実体が無いって、幻影を見ることよ。
サトミ 夢を重んじて、現を軽んじると、どうなるの?
メグミ 現のない夢なんて、単なる悪夢に過ぎないよ。
サトミ じゃ、幻に塗れても、夢が覚めないのかな?
メグミ そうよ、夢に魘されて、幻に厭くだけなのよ。
サトミ 現を重んじて、夢を軽んじると、どうなるの?
メグミ 夢のない現なんて、単なる示現に過ぎないよ。
サトミ じゃ、現に覚めても、幻に塗れないのかな?
メグミ そうよ、幻に現われて、現を示すだけなのよ。
サトミ 夢だけは、覚めないから、飽いていくだけ。
現ばかりは、酔えないから、空いていくだけ?
メグミ そうよ、夢と現、その両方が、必要になるの。
サトミ じゃ、現を介しながら、夢を解していくの?
メグミ うふっ、夢を究めながら、現を極めていくの。
サトミ ……………………!!
CASE 胡 蝶 之 夢 壱
サトシ 荘子が説いた、胡蝶の夢は、どんな話なの?
マサシ 荘子が、蝶の姿に為って、宙を舞っていたよ。
サトシ このとき、荘子は、自分を蝶と思っていて、
蝶の世界を、現実と、想い込んだわけだよね。
マサシ そうさ、しばらく、それを楽しんでいたけど、
ふと、目が覚めると、夢だったと気づいたよ。
サトシ このとき、荘子は、自分を人と思っていて、
人の世界を、現実と、想い返したわけだよね。
マサシ そうさ、普通だったら、そこで終わるんだ。
ああ、蝶に為った、夢を見ていただけだって。
サトシ 普通じゃない、荘子は、どこまで考えたの?
マサシ 人が蝶になる夢を、見ていたのではなくて、
蝶が人になった夢を、見ているのではないか。
サトシ そっか、確かに、そこまで、考えてしまうと、
何が現なのか、何が夢なのか、解らなくなる。
マサシ それなら、ここから先は、僕の話なんだけど、
この瞬間も、夢を見ていると、思わないかな?
サトシ いやいや、そんな夢みたいな話、想わないよ。
マサシ そうさ、だよね、そう考えるのが、普通だよ。
サトシ ……………………
CASE 胡 蝶 之 夢 弐
サトシ 聞いてよ、僕ね、面白い映画を見て来たんだ。
アツシ そうか、その映画は、どんな物語だったんだ?
サトシ 主人公が、現実であると、思っていた世界が、
訪問者から、虚構であると、教えられたんだ。
アツシ 従来の現実が、仮想であると、知ったわけか。
サトシ そして、世界の真実が、明かされたんだけど、
何と、人類は、宇宙人に、飼われていたんだ。
アツシ 恐らく、その先、主人公は、救世主として、
幻想を望むか、真実に臨むか、道を迫られた。
サトシ 良く解かったね、そうだよ、その通りだった。
アツシ まあ、そうだろう、それなら、その映画では、
飼育の世界さえ、幻想だと、明かされたのか?
サトシ ううん、そんなこと、明かされていなかった。
アツシ 主人公は、その世界も、幻影だと見抜いたか?
サトシ ううん、そこまでは、見抜いて居なかったよ。
アツシ それなら、ここから先は、俺の話なんだが、
この世界も、幻影であると、君は思わないか?
サトシ いやいや、この世が幻なんて、誰も想わない。
アツシ まあな、だよな、そう考えるのが、映画だな。
サトシ ……………………