第三章 第三一話 対話編
CASE 小乗 の裏に 大乗
マナミ ヒナヤーナ、小乗って、どういうものなの?
マサシ 小乗とは、自分を乗せる、小さな乗り物だよ。
マナミ 対象を、自分に狭めるのは、どうしてなの?
マサシ 先ず、条件を狭めながら、因果を超える為さ。
マナミ マハーヤーナ、大乗は、どういうものなの?
マサシ 大乗とは、全員を乗せる、大きな乗り物だよ。
マナミ 対象を、全員に広げるのは、どうしてなの?
マサシ 次に、条件を広げながら、因果を越える為さ。
マナミ う~ん、良く解らないから、喩えて欲しいの。
マサシ 或る道を辿り、頂に上るのが、小乗であり、
全ての道を辿り、山に昇るのが、大乗なのさ。
マナミ 小乗の段は、山の頂上に、至ろうとするけど、
大乗の階では、山の全体を、知ろうとするの?
マサシ うん、小乗は解脱に臨み、大乗は智慧を望む。
マナミ つまり、山の頂上まで、一度だけ至っても、
ちっとも、山の全体まで、見えて来ないのね?
マサシ そうさ、隅々まで知るため、済度に向うのさ。
マナミ じゃ、小乗の解脱は、出発点に過ぎないの?
マサシ そうさ、山の全体像を、垣間見ただけなのさ。
マナミ ……………………!!
CASE 小乗 の先に 大乗
サトミ 自分を救う、小乗って、どういうものかな?
メグミ 小乗とは、自らの不幸を、取り除くものだよ。
サトミ 他者も救う、大乗って、どういうものかな?
メグミ 大乗とは、周りの不幸も、取り除くものだよ。
サトミ 最初に、自らを救って、周りを救っていくの?
メグミ うん、周りを救わないと、自らも救われない、
宇宙の、驚愕の真相を、認めてしまうからよ。
サトミ 嘘でしょ、信じられないわよ、訳が解らない。
メグミ 例えば、不幸の手紙が届いたら、どうする?
サトミ そんなの、そそくさと、手紙を出しちゃうわ。
メグミ 周りの人は、苦しむけど、それでも良いの?
サトミ 良いのよ、仲の良い人には、出さないからね。
メグミ でもね、出しちゃうと、また、届いちゃうよ。
サトミ その時は、その時よ、また、出せば良いもん。
メグミ 大乗は、不幸の連鎖を、繰り返さないために、
わざわざ、届けて貰って、手紙を破り捲るの。
サトミ ダメよ、そんなことしたら、不幸になるわよ。
メグミ うん、迷信に囚われると、怖くて出来ないね。
大乗で、智慧を磨くと、妄信だって解かるの。
サトミ ……………………
CASE 小乗 という 大乗
サトミ 小乗の段で、説く教えって、どういうもの?
マナミ 小乗では、己の苦を抜き、己に楽を与えるの。
サトミ 我が悩みを、取り除くには、どうするのかな?
マナミ 後から苦しむ、その代わりに、先に苦しむの。
サトミ 大乗の段で、解く教えって、どういうもの?
マナミ 大乗では、他の苦を抜き、他に楽を与えるの。
サトミ 他の悩みを、取り除くには、どうするのかな?
マナミ 周りが苦しむ、その代わりに、自ら苦しむの。
サトミ おかしいな、良く解らない、矛盾してない?
マナミ 苦しみを、喜びに変えるから、矛盾しないの。
他の悩みを、背負うことを、我が喜びにする。
サトミ どうして、他の苦を取り除く、必要があるの?
自らの苦を、取り除くだけでも、十分でしょ。
マナミ 小乗で取るのは、内に隠れた、苦しみの因。
大乗で除くものは、外に現れた、苦しみの縁。
サトミ 因も縁も越えないと、いずれ、苦しくなるの?
マナミ うん、皆が救われるまで、誰も救われないの。
サトミ うそよ、そんな気が遠くなる話、言わないで!
マナミ うん、嘘で良いの、あなた、苦しいんでしょ。
サトミ ……………………
CASE 大乗なき小乗 と 小乗なき大乗
サトミ 小乗と大乗、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 自らを救う、小乗って、どういうものかな?
メグミ 小乗とは、他を救うため、我を救う道なのよ。
サトミ 周りを救う、大乗って、どういうものかな?
メグミ 大乗とは、我を救うため、他を救う道なのよ。
サトミ 小乗を望み、大乗に臨まないと、どうなるの?
メグミ 大乗なき小乗なんて、唯の独善に過ぎないよ。
サトミ じゃ、自らを救っても、周りを救わないの?
メグミ そうよ、独り善くなって、他は悪いままなの。
サトミ 大乗を望み、小乗に臨まないと、どうなるの?
メグミ 小乗なき大乗なんて、只の偽善に過ぎないよ。
サトミ じゃ、自らを救えずに、周りを救えないの?
メグミ そうよ、善い振りをして、誰も善くならない。
サトミ 小乗だけは、他を救わない、我が救われず、
大乗ばかりは、我を救えずに、他も救えない。
メグミ うん、小乗と大乗、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、大乗に依り、小乗に拠っていくの?
メグミ そうなの、小乗を究め、大乗を極めていくの。
サトミ ……………………!!