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物語編

第六章 第十話 物語編

第六章    業   と   劫
第十話 小さなめぐり と 大きなめぐり

 

思い起せば、私の前半生は、楽しい事が多く、
その一方で、私の後半生は、悲しい事が多かった。
総じて見れば、人生に於ける、苦と楽は半々でした。

 

楽しいだけの命は、会話の種には為りますが、
飽きるだけで終わって、人生の糧には成りません。
喜んで聞こうとしますが、何も学ぶ事は無いのです。

 

苦しいだけの命は、人生の糧には為りますが、
嫌がるだけで始まらず、会話の種には成りません。
学べる事は多くても、誰も聴く耳を持たないのです。

 

私の人生は、良い事が有れば、悪い事がある。
言うなれば、欲界の縮図のような、人生でしたが、
そのままでは、語るに値しない、詰らない章でした。

 

楽しい事も、苦しい事も、同じ量あったのに、
すべて台無しに、一切皆苦と、見てしまいました。
こんな詰らない話、誰も喜んで、聴こうとしません。

 

私の身と心は、道の脇に打ち棄てられたまま、
虚無に魅入られて、消えて逝くと思っていました。
嬉しくもないが、悲しくもない、無に還ったのです。

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