物語編
第六章 第六三話 物語編
第六章 人民 と 神民
第六三話 人に支える民 と 神に仕える民
“いま、いちど、ゆめゆめ、忘れて下さるなよ。
神の国と呼ばれる国、世の中に、いろいろあるぞ。
それらは、すべて、神が作ったと、申しておろうが。”
“まことの民は、欲深ならずに、選り好みせん。
ただ、神と繋がりて、世のものを、まるごと安心。
だから、どこに居ても、神のもとに、戻れるのだぞ。”
“いつわりの民は、それが、分からんのじゃぞ。
ただ、業と連なりて、世のものと、まぐわい放心。
だから、なにを見ても、神のそのが、見えんのだぞ。”
“そもそも、選民の教えとは、禽獣を導く教え。
獣の子が、人の子となるための、仮初の法じゃぞ。
すでに、人であると思うなら、自ら捨てて下されよ。”
“もとより、選民の教えとは、開神に導く教え。
人の子が、神の子となるための、永久の法じゃぞ。
もはや、要らないと思うなら、他に与えて下されよ。”
“それゆえ、このことを、ゆめゆめ忘れるなよ。
親と子が、互いに獣として、殺し合う日が来るぞ。
それら、すべては、神が遣わしたと、申しておくぞ。”
“いま神の子もと人の子、いま獣の子もと人の子。
知恵ある者は解きなされ、神の子、の裏に、獣の子。”