物語編
第一章 第二三話 物語編
第一章 解る と 悟る
第二三話 因果を解する と 条件を介する
『主から、君が何を修めるか、私は興味がある。
無欲の心に、何が宿るのか、確めてみたいものだ。
是まで訪れた、若者の為体には、失望を禁じ得ない。』
『君は、心が空いている、隠したい闇さえない。
他の者は、心が飽いている、逃れたい罪ばかりだ。
彼らは、既に終わった後だが、君は未だ始まる前だ。』
『君には、老師は、美事な色を塗れるだろうが、
他の者には、老師は、見事に色を落としただろう。
君と彼らの違いは、老師が思い通り、出来るか否か。』
『蓋し、ここの主は、私利私欲で動いていまい。
絶対の高みに至らせる、相対の教えを説いている。
如何なる教えを解こうと、それは相手のためだろう。』
『確かに、今までの若者は、誰もが魔が差した。
しかし、その事を以って、主を裁く事は出来ない。
もともと、狂っていたのだ、主の過ちには出来まい。』
『言わば君は、私が送り込む、彼への試金石だ。
君の染まり具合、それを以って、私は彼を裁こう。
彼を活かすか、彼を殺すかは、君次第と言うことだ。』
責任重大じゃないか、な、と、彼は楽し気に笑った。