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物語編

第一章 第二五話 物語編

第一章    無限   と   有限
第二五話 実感が漏れる と 実感が収まる

 

額から汗が滴り落ちる、数分も経ってはいまい。
しかし、その時の密度たるや、尋常ではなかった。
彼は誰だ、老師に会う前に、背負う物が生じるとは。

 

初めは、軽く話して来たが、私を認めるや否や、
無意識に、忍び込んで来ると、全てを暴き出した。
何処が嘘で、何処からが本心か、まるで解からない。

 

長かった、無限に感じられる、時の長さだった。
しかし、過ぎ去ってみれば、一瞬の出来事だった。
時は、無限にも感じられるが、有限にも観じられる。

 

捉え方が変れば、時の流れは、幾らでも変わる。
実感を離れて、纏めて捉えれば、有限に収まるが、
実感に塗れると、時間が流されて、無限に開かれる。

 

ここを、訪れる前までは、何も無かった筈だが、
主の物語に引き込まれ、彼の登場に巻き込まれて、
自分自身が想い寄らない、心の闇が晒し上げられた。

 

老師に会う前に、心を澄まして、置く要がある。
偏っていては、老師と見える、意味が損なわれる。
此の場所に、一切を脱ぎ捨てて、最後の扉を開けた。

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