第一章 第二六話 対話編
CASE 痴 の裏に 知
マナミ 思いのままに、痴って、どういうものなの?
マサシ 痴とは、Aを見とめ、非Aを認めないことさ。
マナミ 裏を見ず、表を見ると、どうなっていくの?
マサシ 世界を、痴れば痴るほど、歪んでしまうのさ。
マナミ 在りのままに、知って、どういうものなの?
マサシ 知とは、Aを見とめ、非Aも見とめることさ。
マナミ 表を見て、裏も見ると、どうなっていくの?
マサシ 世界を、知れば知るほど、直ってしまうのさ。
マナミ どうして、好きなだけ、歪んだらいけないの?
マサシ Aを見ると、無意識では、非Aも見ている。
それゆえ、Aだけ見るのは、絶対に出来ない。
マナミ つまり、出来ないことを、出来ると思って、
どんどん、偏っていくのが、痴ってことなの?
マサシ そうさ、痴れば痴るほど、世界が歪んでいき、
ますます、意味に囚われて、意識が病むのさ。
マナミ う~ん、好きな事だけ知れば、良いと思うの。
マサシ あら、知ったかと想ったら、痴っただけだね。
マナミ う~ん、わたしは、ちゃんと、知ったと想う。
マサシ うん、どちらにせよ、そのうち、思い知るよ。
マナミ ……………………
CASE 知のない痴 と 痴のない知
サトミ 痴と知、どちらの方を、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 思いのまま、痴るって、どういうものかな?
メグミ 痴るとは、表を見たのに、裏を見ないことよ。
サトミ 在りのまま、知るって、どういうものかな?
メグミ 知るとは、表を見たなら、裏も見ることだよ。
サトミ 痴るを望み、知るに臨まないと、どうなるの?
メグミ 知るなき痴るなんて、知に覆われるだけよ。
サトミ じゃ、表を見るだけで、裏を認めないのかな?
メグミ そうよ、知を負わないと、知に追われるのよ。
サトミ 知るを望み、痴るに臨まないと、どうなるの?
メグミ 痴るなき知るなんて、痴に覆われるだけよ。
サトミ じゃ、裏を見るだけで、表を認めないのかな?
メグミ そうよ、痴を負わないと、痴に追われるのよ。
サトミ 痴だけでは、裏を知るまで、病んで行くし、
知ばかりでは、表を痴るまで、止んで逝くの?
メグミ そうよ、痴と知、そのどちらも、必要なのよ。
サトミ じゃ、痴を負いながら、知を追っていくの?
メグミ うふっ、痴に臨みながら、痴を望んでいくの。
サトミ ……………………!!
CASE 知る と 解る と 悟る
サトシ 結果を見る、知るって、どういうものかな?
マサシ 知るとは、〇を見とめて、一を見ることだよ。
サトシ じゃあ、良く知るとは、どういうことかな?
マサシ 偏らない、不偏の結果を、知ることなんだよ。
サトシ 原因を見る、解るって、どういうものかな?
マサシ 解るとは、一を見とめて、二を見ることだよ。
サトシ じゃあ、良く解るとは、どういうことかな?
マサシ 歪まない、普遍の原因が、解ることなんだよ。
サトシ 条件を見る、悟るって、どういうものかな?
マサシ 悟るとは、二を見とめて、一を見ることだよ。
サトシ じゃあ、良く悟るとは、どういうことかな?
マサシ 変らない、不変の条件を、悟ることなんだよ。
サトシ う~ん、初めて聴いたから、良く解からない。
マサシ うん、まさに、それこそ、知るということさ。
サトシ でもね、見る対象が異なり、違いが有るよね。
マサシ うん、まさに、それこそ、解るということさ。
サトシ でもね、見る行為は等しく、違いが無いよね。
マサシ うん、まさに、それこそ、悟るということさ。
これで、知ると解ると悟る、良く見えたかい?
サトシ ……………………!!
CASE 知識 と 知能 と 知恵
サトミ 知を集める、知識って、どういうものかな?
サトシ 不偏的に、空間の意味を、集めるものだって。
サトミ 知を重ねる、知能って、どういうものかな?
サトシ 普遍的に、時間の意識を、重ねるものだって。
サトミ 知を越える、知恵って、どういうものかな?
サトシ 不変的に、時空の認識を、越えるものだって。
サトミ う~ん、最後は越えないと、いけないのかな?
サトシ 解らない、僕は、そうだって、聞いたんだよ。
マナミ サトミ、あなたは、因果を越えるべきだし、
サトシ君、あなたは、因果を求めるべきなの。
サトシ う~ん、因果を求めるのは、どうしてなの?
マナミ 因果を重ねるとき、正しさが現れるからなの。
サトシ なるほど、因果なく信じたら、いけないのか。
マナミ そうね、あなたは、もっと、考えるべきなの。
サトミ どうして、因果を越えないと、いけないわけ?
マナミ それは、条件が変わるとき、因果も換るから。
サトミ もう、求めろと言ったり、捨てろと言ったり、
あんた、言っていることが、矛盾しているわ!
マナミ ほら、そう見えてしまうから、越えていくの。
サトミ ……………………