物語編
第一章 第二八話 物語編
第一章 無理 と 合理
第二八話 理が無いこと と 理が有ること
自らの正当性を認められ、安心したのだろうか。
知識の鎧を脱いだ彼は、私を次なる部屋に導いた。
そこは、青の世界であり、青き衣の者が坐っていた。
赤き者は、白き人々には、横柄な態度だったが、
この青き者に対しては、必要以上に遜って見えた。
恭しく片膝を付いてから、元の部屋へ帰って行った。
青き者は、君の問は何かと、静かに尋ねて来た。
そして、私の問に対して、詳らかに解き明かした。
言葉に淀みなく、理路整然と語り、弁舌が爽やかだ。
予め用意された答えを、彼は応えているだけか。
覚えた論理を知識として、私に説いているだけか。
そのように疑った私は、備えの効かない問を尋ねた。
彼は、しばらく考えた後に、自らが辿った跡を、
私も連れて辿らせながら、答えを導き出していた。
熟練の即興劇は見事で、その結末に感動さえ覚えた。
一方で、どうしても、気になる点も見えて来た。
彼は、教団を守る、代弁者の役に就いていたため、
決して、その前提を越えて、議論しようとはしない。
彼は、因果を解くが、相手の条件には立たない。
自分の条件に拘るため、予め結論が決まっている。
説得は出来ても、止揚は出来ない、幻想の中に居た。