第一章 第二九話 対話編
CASE 無智 の裏に 愛智
マナミ 悟ってない、無智って、どういうものなの?
マサシ 無智とは、思いのままに、条件を悟ることさ。
マナミ 悟っている、愛智って、どういうものなの?
マサシ 愛智とは、在りのままに、条件を悟ることさ。
マナミ 無智にせよ、愛智にしても、悟ることなの?
マサシ 無智は、Aを悟っても、非Aを悟らないこと。
愛智とは、Aを悟ったら、非Aも悟ることさ。
マナミ 逆の条件を、認めないとき、どうなるのかな?
マサシ 少しずつ、知恵が曇って、時空が固くなるよ。
マナミ 逆の条件を、見とめるとき、どうなるのかな?
マサシ 少しずつ、知恵が澄んで、時空が柔くなるよ。
マナミ という事は、悟っていれば、良い訳じゃなく、
あらゆる事を、悟ろうとする、必要があるの?
マサシ そうさ、徒に愛しても、智を愛すどころか、
逆に、智を愛すだけ、智を憎むこともあるよ。
マナミ これは、すごいことを、悟っちゃった気分。
これだけ、悟っていれば、もう充分なくらい。
マサシ 悟ってない、無智の自覚が、出来ていない。
好き勝手、悟っていれば、良い訳じゃないよ。
マナミ ……………………!!
CASE 無智 の先に 愛智
サトミ 智を損ねる、無智って、どういうものかな?
メグミ 無智とは、好きな条件を、認めることなのよ。
サトミ 智を求める、愛智って、どういうものかな?
メグミ 愛智とは、嫌いな条件を、認めることなのよ。
サトミ 好む条件を、認めていると、どうなるのかな?
メグミ 嫌いな条件を、認めないから、無智になるよ。
サトミ 親しい前提だけ、介していたら、いけないの?
メグミ 疎い前提まで、介そうとしないと、拘るのよ。
サトミ 認識が堅くなり、実感に拘ると、どうなるの?
メグミ 自然に臨まず、条件を望んで、不変を損うよ。
サトミ じゃ、自ずと固くなり、周りは脆くなるの?
メグミ そうよ、固さに隠される、脆さを見とめない。
サトミ 別に映る、他を認めないと、どうなるのかな?
メグミ 確かに、他を訪わないと、世界は保たれる。
でも、その他を問われると、世界は崩れるよ。
サトミ そっか、自我に被われて、自己を守っても、
結局、その自我が覆えって、自己が壊される。
メグミ 一見ね、このように、壊れた様に見えるけど、
より、不変的な世界が、生まれて来るからね。
サトミ ……………………!!
CASE 無智 という 愛智
サトミ 悟らないよりも、悟っている方が、良いのよ。
マナミ ううん、拘って悟るより、悟らない方が良い。
サトミ 嘘よ、悟らない癖に、適当なこと言わないで!
マナミ 悟れば、悟るほど、無智になってしまうから。
サトミ 悟るほど、悟れなくなるって、どういうこと?
マナミ いつも、悟りたいことしか、悟らなければ、
逆に、悟りたくなければ、悟ろうとしないの。
サトミ つまり、好む条件しか、見とめていないと、
逆に、嫌う条件まで、見とめようとしないの?
マナミ そうよ、自らの条件でしか、判断しないから、
他の縁を、受け容れることが、出来ないのよ。
サトミ 拘っているか、否かでしか、判断しないから、
留らない条件は、いつまでも、認められない?
マナミ そうね、知恵とは、時空を越える認識だから、
超えるか、越えないかで、判断するしかない。
サトミ ふ~ん、そんな話は、どうでも良いんだけど。
マナミ 拘れないなら悟らない、留まるものだけ悟る。
あなた、いつに為ったら、この話を認めるの?
サトミ どうでも、良いわけだから、いつでも良いわ。
マナミ ……………………
CASE 愛智 という 無智
アツシ 悟り易くなると、裏で、悟り難くなっている。
サトシ う~ん、どういうことかな、実感が湧かない。
アツシ それなら、1+1=2に、実感が生じるか?
サトシ 1+1=2が、条件に有るから、生じるよね。
アツシ それなら、1+1=3に、実感が生じるか?
サトシ 1+1=3が、条件に無いから、生じないよ。
アツシ つまり、AというBに、実感が生じるとき、
裏の、Aという非Bには、実感は生まれない。
サトシ そっか、条件に合わないと、実感が湧かない。
アツシ 無意識に、隠される、前提の条件が変わると、
自意識まで、現われる、因果の実感が換わる。
サトシ 無意識に、隠れる条件は、一体、何なのかな?
アツシ その実体は、過去の経験を蓄える、自我だな。
サトシ 自我に、湧き上がる、実感に囚われていると、
他我から、沸き上がる、実感を認められない?
アツシ そうだ、どころか、たとえ、囚われなくても、
他が、どうでも良くなり、認められなくなる。
サトシ そっか、そういう事か、それは大変だろうね。
でも、どうでも良いかな、僕には関係ないし。
アツシ ……………………
CASE 愛智なき無智 と 無智なき愛智
サトミ 無智と愛智、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 時空が偏る、無智って、どういうものかな?
メグミ 無智とは、好きな条件を、望んでいくことよ。
サトミ 時空が直る、愛智って、どういうものかな?
メグミ 愛智とは、嫌いな条件に、臨んでいくことよ。
サトミ 無智を望み、愛智に臨まないと、どうなるの?
メグミ 愛智なき無智なんて、唯の半智に過ぎないよ。
サトミ じゃ、時空が偏るだけ、時空が直らないの?
メグミ そうよ、一向に直さずに、知恵を研けないよ。
サトミ 愛智を望み、無智に臨まないと、どうなるの?
メグミ 無智なき愛智なんて、只の無智に過ぎないよ。
サトミ じゃ、時空が直るだけ、時空が偏らないの?
メグミ そうよ、以降は直せずに、知恵を磨けないよ。
サトミ 無智だけは、好きだけ、悟ろうとするけど、
愛智ばかりは、そもそも、悟ろうとしないの?
メグミ うん、無智と愛智、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、無智を負って、愛智を追っていくの?
メグミ うん、無智を究めて、愛智を極めていくのよ。
サトミ ……………………!!