物語編
第一章 第三十話 物語編
第一章 知性 と 悟性
第三十話 因果を認める と 因縁を認める
知れば知るほど、苦しくなる、残酷な仕組みに、
諦め切った思いで、私は改めて、周囲を見渡した。
終末感が漂う中、最後まで人々は、行に努めている。
彼らは、終りが近いことに、薄々気付いている。
それでも、この闇の先にこそ、栄光が現われると、
心の動揺を、沈黙を以って抑え、必死に堪えていた。
もし、これが外の世界なら、酒でも飲みながら、
互いに、愚痴でも溢して、不満を紛らわすだろう。
中の人は、逃げない分だけ、真剣に解を求めている。
惜しむらくは、過酷な試練を、乗り越えるため、
教団内の人々が、選民の美酒に、酔い痴れること。
内は聖であり、外は邪であり、我々だけが真正だと。
特に厳しい現実を、特に選ばれた、幻想に変え、
幸か不幸か、醒め遣らない夢に、抱かれてしまう。
酩酊を疑わず、幻を礎にして、狭き砦を築き上げる。
確かに、住めば都、その中は安全かもしれない。
さりとて、そもそも、内と外に分けていなければ、
内を誇って、外と戦う、必要など初めから無かった。