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物語編

第一章 第三四話 物語編

第一章    実感   と   時間
第三四話 因果を重ねる と 条件を重ねる

 

彼女は、私を祭壇とは、逆の方に連れて行った。
人が見向きもしない方に、主に続く道があるとは。
下を蔑み、上を崇める者に、この仕掛は気づくまい。

 

私が、貴方は何者ですかと、老婦人に尋ねると、
彼女は、底辺の只者ですがと、笑いながら答えた。
老師とは、教祖になる前からの、古い友人だそうだ。

 

こんなこと、辞めたら良いと、私は言うんだ。
でもね、いつも、笑いながら、躱されてしまった。
私の役なのに、私が辞めて、誰かが負えるのかって。

 

老師は、通念に挑んだり、権力に逆らったり、
世間を騒がして見せるが、悪の仮面を被っただけ。
素の彼からしてみれば、神の芝居を演じるだけだね。

 

聖師は、弟子を育てたり、信者を癒したりと、
教団を動かして魅せるが、善の仮面を着けただけ。
素の彼からしてみれば、神の仕組を整えるだけだよ。

 

世間の人々は、悪の面だけ見て、憎んでいて、
教団の信者は、善の面だけ見て、信じているから、
どちらにしても、素の面が見えず、真意を悟れない。

 

いずれ、明らかになるが、人類には未だ早い。
善と悪とが、引っ繰り返るが、誰も正視できまい。
ここは、世界の雛型、あんたは、先に確めておいで。

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