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物語編

第一章 第三五話 物語編

第一章    具象   と   抽象
第三五話 並んで見える と 絡んで見える

 

扉を開くと、洞窟の天井が抜けて、空が現れた。
陽が差し込み、光が降り注ぐ下には、老人が一人、
釜の火を落とし、釜から焼き物を、取り出していた。

 

焼き物を手に取って、ゆっくり回して眺めると、
なかなか、良い色が出たものだと、撫でて喜んだ。
そして、私の方を振り返ると、遅かったなと叫んだ。

 

ここに来るまでに、君は、三度の嘘を吐いた。
真理を修めるため、とはいえ、君は真理に背いた。
君は、三度、私に叛くだろうが、それは罪ではない。

 

ここに来るまでに、君は、多様な人を認めた。
如何なる宗も、如何なる派も、等しいと見とめた。
君は、対立する様々な人と会い、それを一つに結ぶ。

 

ここに来るまでに、君は、知恵の実を食べた。
つまり、知ること、解すこと、捕らわれないこと。
君は、忌み嫌われる、蛇となり、人類を英知に導く。

 

そして、老人は、私の傍に来て、茶碗を見せた。
その茶碗は、鈍い色もあれば、鮮やかな色もあり、
得も言われぬ、味わいが滲んで、光沢を放っていた。

 

見給え、この味わいが、人類の行く末を暗示する。

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