第一章 第三五話 問答編
マサシ 具象(グショウ)とは、どういうものですか?
アキラ 具象とは、陰と陽に、分けた形であり、
解り易いが、悟り難い、下位概念である。
例えば、林檎や蜜柑とは、下位の形であり、
合せると、「果物」という、上位の型となる。
マサシ 抽象(チュウショウ)は、どういうものですか?
アキラ 抽象とは、陰と陽に、合せた型であり、
解り難いが、悟り易い、上位概念である。
たとえば、「果物」とは、上位の型であり、
分つと、林檎や蜜柑という、下位の形となる。
アサゴ 真の芸術とは、どういうものですか?
マコト 衆生の芸術は、内から外に魅せるもの。
良く磨き上げた、選れた欲を使いながら、
外なる者に向けて、内なる物を現わします。
即ち、他我に向けて、自我を美しく奏でます。
菩薩の芸術は、外から内に魅せるもの。
悉く受け容れる、優れた徳を遣いながら、
内なる者に向けて、外なる物を表わします。
即ち、真我に向けて、自我を美しく捧げます。
つまり、外の評価を、気にしていたり、
外に、見せたいように、魅せている内は、
生命を、磨き上げて、在りのままを魅せる、
人生即芸術である、真の芸術家と言えません。
アサゴ 菩薩は、素晴らしい芸術家なのですか?
マコト 菩薩は、神意を汲んで、生まれますが、
このとき、課された業を、全て受け容れ、
押し寄せる、試練の数々に、怯むことなく、
血と汗と涙を流して、感謝に変えて生きます。
その人生が、苦しければ、苦しいほど、
その中で、産まれる感謝は、奇跡であり、
感謝で研き上げた生命は、宇宙に光り輝き、
それを見守る真我や如来は、大いに喜びます。
アサゴ 菩薩は、神を喜ばせる、芸術家ですか?
マコト はい、神は、あなたの胸の中に住まい、
あなたの心の中しか、見とめていません。
神を喜ばせるのは、心からの感謝だけです。
外を飾ろうと無意味、むしろ粗末なほど好機。
タダミ 人間が、苦しみの中で、感謝することに、
どうして、そんなに、菩薩は喜ぶのですか?
それよりも、貴い事は、他にも在りそうです。
マコト 美しい、容姿を持って、生まれること。
天才的な、才能を以って、産まれること。
莫大な、財産を持って、人生を楽しむこと。
神秘的な、権威を以って、人心を集めること。
これら世の人々が、羨むようなことも、
カルマを越えている、菩薩にしてみれば、
然るべきカルマを、自らに纏いさえすれば、
容易に出来てしまい、感動からは程遠いです。
そんな、自由自在なる、菩薩にとって、
数少ない、挑戦するべき、有り難いもの。
それこそが、苦の中にあり、歓喜すること、
苦界に生まれ、其の命に、感謝することです。
というのも、カルマを負えば負うほど、
確かに、徳を溶かし、欲を適えられても、
その一方、徳が消えて、喜が失われるから。
菩薩と雖も、二律背反に、限界を見とめます。
それゆえ、あなたが、苦しい人生の中、
心の底から、有難いと、感謝が出来れば、
その瞬間、あなたは、菩薩に生まれ変わり、
先達は、その姿に、心を動かし褒め称えます。