第一章 第三七話 対話編
CASE 正常 の裏に 異常
マサシ 正常が生まれると、異常が埋まれているのさ。
異常なき正常もなく、正常のない異常もない。
マナミ 正なる常識、正常って、どういうものなの?
マサシ 正常とは、表に現われる、常識のことなのさ。
マナミ 異なる常識、異常って、どういうものなの?
マサシ 異常とは、裏に隠される、常識のことなのさ。
マナミ ずっと、正常は正常であり、異常は異常なの?
マサシ いや、正常は異常になり、異常は正常になる。
マナミ 次々に、異常と正常は、入れ替わり続けるの?
マサシ そうだよ、正常と異常は、相対的なものだよ。
マナミ う~ん、そういう考え方は、異常に思えるの。
マサシ じゃ、どういう考え方が、正常に想えるの?
マナミ 絶対に、正常と異常は、絶対的なものなの。
マサシ そうかな、異常と正常は、相対的なものだよ。
マナミ 絶対に、正常と異常は、絶対的なものなの。
マサシ うん、ここで譲れるのは、僕だけのようだね。
じゃあ、君が正常だよ、僕が異常になるから。
マナミ えっ、私が正しくて、あなたが誤りでいいの?
マサシ いいよ、正常と異常は、相対的なものだから。
マナミ ……………………
CASE 正常 の先に 異常
サトミ 慣れている、正常って、どういうものかな?
メグミ 正常とは、繰り返すから、慣れているものよ。
サトミ 慣れてない、異常って、どういうものかな?
メグミ 異常とは、折り返すから、慣れてないものよ。
サトミ う~ん、良く解らない、どういうことかな?
メグミ じゃ、初めて見るものに、実感は有るかな?
サトミ ううん、覚えが無いものに、実感は湧かない。
メグミ 繰り返し、捉えていると、どうなると思う?
サトミ いつも、見えているものは、実感が生じるの。
メグミ うん、これが常となって、正常になるのよ。
サトミ 正常が、繰り返されるほど、どうなるのかな?
メグミ その表に、慣れ過ぎてしまい、飽いて来るの。
サトミ 異常に、折り返されるのは、どうしてかな?
メグミ その裏を、求め始めてしまい、慣れて行くの。
サトミ 正常の段は、慣れ過ぎると、飽いて来るし、
異常の階では、厭き過ぎると、慣れて行くの?
メグミ うん、正常と異常を、繰り返し、行き来する。
サトミ う~ん、この繰り返しには、飽きないのかな?
メグミ 飽きるよ、常の乗り越え方を、求め始めるの。
サトミ ……………………!!
CASE 正常 という 異常
サトミ あたしは正常だけど、あんたが異常なのよ。
マナミ そういうことは、あまり言わない方が良いの。
サトミ 言っても、別に構わないわ、事実なんだもん。
マナミ 条件が変わると、正常なほど、異常になるの。
そのとき、すべて、自分に、跳ね返って来る。
サトミ あたしが異常になり、あんたが正常になるの?
嘘よ、そんな日なんて、永遠に来る訳ないわ!
マナミ ううん、意識的に、正常だと思っていると、
その裏で、無意識に、異常だと想っているの。
サトミ 意識し、自分のことを、正常と思い込むと、
無意識に、自分のことを、異常と想い込むの?
マナミ そうよ、異常な自分を、他者に映してしまい、
こんなの、自分でないと、他者として見るの。
サトミ うそよ、そんな異常なこと、言っているの、
あたしは、聴いた事ないもん、あんただけよ。
マナミ 深い意識で、あなたも、知っているはずなの。
そうでないと、こんなに、突っ掛からないの。
サトミ うそよ、突っ掛って来るのは、あんたの方よ。
マナミ そうだね、正常を争い合うのは、異常だもの。
サトミ ……………………
CASE 異常 という 正常
サトシ 常識である、正常って、どういうものかな?
マサシ 正常とは、表の常である、正なる常識なのさ。
サトシ 常識でない、異常って、どういうものかな?
マサシ 異常とは、裏の常である、異なる常識なのさ。
サトシ 正常にせよ、異常にしても、常に過ぎないの?
マサシ そうだよ、常が無ければ、正常も異常も無い。
つまり、常が生まれるから、正異が埋まれる。
サトシ これこそ、常であるって、思わなかったら、
正常である、異常であると、想わなくなるの?
マサシ そうだよ、繰り返される、平常が無ければ、
この世界は、正常も無いし、異常も無いのさ。
サトシ それなら、常に異なることが、起きるなら、
常そのものが、無くなって、正も異も無いの?
マサシ ううん、そうなると、もはや、それが常だよ。
常に、違う事が起こる、異常という正常だね。
サトシ そっか、違う事を繰り返すが、正常になると、
逆に、同じ事を繰り返すが、異常になるのか。
マサシ そうさ、違っても、同じでも、常になるのさ。
いつでも、どこでも、常は、憑いて回るんだ。
サトシ ……………………!!
CASE 異常なき正常 と 正常なき異常
サトミ 正常と異常、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 慣れている、正常って、どういうものかな?
メグミ 正常とは、繰り返された、後に表れるものよ。
サトミ 慣れてない、異常って、どういうものかな?
メグミ 異常とは、繰り返される、前に現れるものよ。
サトミ 正常を望み、異常に臨まないと、どうなるの?
メグミ 異常なき正常なんて、唯の異常に過ぎないよ。
サトミ じゃ、慣れたものだけ、望んでいるのかな?
メグミ 次第に、飽きてしまって、異常になるだけよ。
サトミ 異常を望み、正常に臨まないと、どうなるの?
メグミ 正常なき異常なんて、只の正常に過ぎないよ。
サトミ じゃ、慣れないものを、望んでいるのかな?
メグミ 次第に、慣れてしまって、正常になるだけよ。
サトミ 正常だけでは、倦んで来て、腐ってしまい、
異常ばかりでは、慣れて来て、熟れてしまう?
メグミ うん、正常と異常、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、正常を負って、異常を追っていくの?
メグミ うん、正常を介して、異常を解していくのよ。
サトミ ……………………!!