第一章 第三八話 対話編
CASE 論理 の裏に 感情
マナミ ねぇ、ロゴス、論理って、どういうものなの?
マサシ 論理は、原因と結果を招じる、関係のことさ。
マナミ じゃ、パトス、感情って、どういうものなの?
マサシ 感情は、原因と結果を生じる、実感のことさ。
マナミ それなら、原因と結果が遠いと、どうなるの?
マサシ 因果が弱くなり、論理も感情も弱くなるのさ。
マナミ それなら、原因と結果が近いと、どうなるの?
マサシ 因果が強くなり、論理も感情も強くなるのさ。
マナミ それなら、因果と条件が遠いと、どうなるの?
マサシ 因縁が弱くなり、感情的より、論理的になる。
マナミ それなら、因果と条件が近いと、どうなるの?
マサシ 因縁が強くなり、論理的より、感情的になる。
マナミ 論理と感情は、因果の関係から、生じている、
表裏に過ぎない、この事実は、目から鱗なの。
マサシ うん、その凄さが解かれば、大したものだよ。
マナミ でもね、どうして、誰も、これに驚かないの?
マサシ 君は、自分が驚いたら、他人も驚くと思う?
マナミ そっか、興奮したら、条件の違いを忘れてた。
マサシ ほら、因果は解けても、因縁が解けないのさ。
マナミ ……………………!!
CASE 論理 の先に 感情
サトミ 理を観じる、論理って、どういうものかな?
メグミ 論理とは、因果に生じる、外観のことなのよ。
サトミ 外に観じる、構造って、他者も観じられるの?
メグミ 外からも、観じられるし、共有が出来るのよ。
サトミ 理を感じる、感情って、どういうものかな?
メグミ 感情とは、因果に招じる、内実のことなのよ。
サトミ 内に感じる、実感って、他者も感じられるの?
メグミ 外からは、感じられずに、共有が出来ないよ。
サトミ 論理は、外から観じるから、共有できるけど、
感情では、内から感じるから、共有できない?
メグミ そうよ、湧き上がる感情は、分ち合えないの。
サトミ それなら、感情を察するには、どうするの?
メグミ 自分と相手、両者の因果を、丁寧に揃えると、
自ら同様、他も感じるはずと、推し量れるよ。
サトミ そっか、因果が同じならば、実感も同じはず、
そう考え、相手の感情を、察していくわけね。
メグミ そうよ、因果を揃えるほど、的確になるのよ。
サトミ でも、そこまでしたって、条件付きだよね。
メグミ うふっ、自分と相手が同じ、保証ないもんね。
サトミ ……………………
CASE 論理 という 感情
サトシ 理を観じる、論理って、どういうものかな?
アツシ 論理とは、意味を観じて、因果を解すものだ。
サトシ 理を感じる、感情って、どういうものかな?
アツシ 感情とは、意識が感じて、因果を介すものだ。
サトシ 論理と感情、どちらも、因果から生じるの?
アツシ その通り、因果が無いと、論理も感情も無い。
サトシ う~ん、1+1=2に、感情なんか湧くかな?
アツシ 怒りや喜びという、実感は湧いて来ないが、
然りや尤もだという、実感は涌いて来ないか?
サトシ 確かに、当り前という、実感は湧いて来るね。
アツシ ああ、その実感こそ、感情の最たるものだな。
サトシ 激情が、一周まわると、冷静になるみたいに、
当り前が、過ぎると、言うまでもなくなるの?
アツシ そうだ、隠れているだけで、確実に存在する。
いざ、覆りそうになると、途端に涌き上がる。
サトシ そっか、1+1=3なんて、言われた途端に、
いや、そんな訳が無いと、否定したくなるね。
アツシ そうだ、とはいえ、やけに、認めるのが早い。
まあ、隠れていただけだから、この通りだな。
サトシ ……………………!!
CASE 感情 という 論理
サトミ もう、あんたは、いつでも、屁理屈なのよ!
サトシ そんな、君なんか、いつでも、感情論なんだ!
サトミ 屁理屈より、感情論の方が、マシなんだから、
理屈を捏ねて、感情を失うの、最低だからね。
サトシ おかしいよ、感情だって、理屈の産物だよ。
因果の関係の、実感こそが、感情なんだから。
サトミ もう、感情こそが、因果を越えたものなのよ。
サトシ 違うよ、感情こそが、因果の最たるものだよ。
サトミ もう、あんたを見ていると、吐き気がする。
金輪際、あたしの方には、近寄らないでよね。
サトシ ほら、その感情だって、理由が在るんだよ。
理由が、要らなくなる程、当然の結果なんだ。
サトミ もう、嫌いだから嫌い、理由なんて無いわ。
あんた、嫌うために、理由なんて要らないわ。
サトシ それなら、そんな君の、生理的な嫌悪感が、
理由もなく、生理的な好感に、変わると思う?
サトミ やだやだ、そんなこと、あるわけないでしょ。
サトシ ほらね、見えないだけで、理由は在るんだよ。
サトミ もう、あんたは、いつでも、屁理屈ばっかり!
サトシ ……………………
CASE ロゴス という パトス
サトミ 論理的なこと、ロゴスは、どういうものなの?
マナミ ロゴスとは、外に浮き出る、因果の関係なの。
サトミ それなら、外から逃げるって、可能なのかな?
マナミ 環状に回り、繰り返すけど、逃げられるの。
サトミ 感情的なこと、パトスは、どういうものなの?
マナミ パトスとは、内に湧き上る、因果の実感なの。
サトミ それなら、内から逃げるって、可能なのかな?
マナミ 感情に溺れ、行き詰まって、逃げられないの。
サトミ つまり、問題の解決にも、問題の回避にも、
ロゴスは、どちらにも、使えちゃうってこと?
マナミ うん、理想論や感情論を、使って逃げるの。
本人は、逃げたと思わないから、要注意なの。
サトミ 逃げたか、逃げていないかの、判断の仕方は?
マナミ 逃げるほど、パトスが、パッションになるの。
すなわち、最終的に、受難に巻き込まれるの。
サトミ なによ、感情的なのが、悪いって言いたい訳?
マナミ パトスで、ロゴスを、歪めなければ良いだけ。
サトミ つまり、パトスが、ロゴスに従えば良いの?
マナミ うん、そのパトスが、出口に向かえば良いの。
サトミ ……………………!!
CASE 感情なき論理 と 論理なき感情
サトミ 論理と感情、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 因果を結ぶ、論理って、どういうものかな?
メグミ 論理とは、因果に生じる、結びのことなのよ。
サトミ 因果を縛る、感情って、どういうものかな?
メグミ 感情とは、因果に招じる、縛りのことなのよ。
サトミ 論理を望み、感情に臨まないと、どうなるの?
メグミ 感情なき論理なんて、小理屈に過ぎないのよ。
サトミ じゃ、因果に捕われて、因縁を遡れないの?
メグミ そうよ、因縁が解からず、条件が分からない。
サトミ 感情を望み、論理に臨まないと、どうなるの?
メグミ 論理なき感情なんて、感情論に過ぎないのよ。
サトミ じゃ、実感に囚われて、因果を遡れないの?
メグミ そうよ、因果が解からず、原因が分からない。
サトミ 論理だけでは、結び過ぎて、縁が見えない。
感情ばかりでは、縛り過ぎて、因が見えない?
メグミ うん、論理と感情、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、感情を負って、論理を追っていくの?
メグミ うん、感情を介して、論理を解していくのよ。
サトミ ……………………!!
CASE ク オ リ ア
サトミ ねえねえ、クオリアって、どういうものなの?
メグミ クオリアは、認識に伴なう、実感のことなの。
サトミ それなら、クオリア問題って、どういうもの?
メグミ クオリアは、説明できないって、ことなのよ。
サトミ そうかな、簡単に見えるけど、そんな難しい?
メグミ これは、難易の問題でなく、原理の問題なの。
あなたは、赤色のクオリアを、説明が出来る?
サトミ やだな、そんなの簡単だよ、リンゴの色だよ。
メグミ あら、リンゴの色って何、説明できてないよ。
サトミ やだな、そんなの簡単だよ、トマトの色だよ。
メグミ あら、トマトの色って何、説明できてないよ。
サトミ じゃあ、可視光線の中でも、波長が長い色よ。
メグミ 私は、その色を、青色に感じているかもよ。
あなたの赤が、わたしの青、かもしれないよ。
サトミ あたしの見る赤を、みんなは青に見ているの?
メグミ うん、青かもしれないし、赤かもしれない。
サトミ う~ん、そう言われてみると、これは問題ね。
幾ら、実感を説明したって、伝わらないのね。
メグミ うふっ、その実感さえも、あなただけのもの。
サトミ ……………………!!
CASE 青色 という 赤色
サトシ うわっ、恐ろしいことが、解かっちゃったよ。
僕らって、どうしても、解り合えないんだ。
サトミ 当然よ、あんたなんかと、分り合いたくない。
サトシ 違う、望んだとしても、解り合えないんだ。
例えば、僕の青色が、君の青色と限らないよ。
サトミ 青色なんて、誰が見たって、青色じゃない。
訳が解らない、ちゃんと、説明しなさいよね。
サトシ どれだけ、説明しても、証明が出来ないんだ。
僕の青色が、君の赤色でない、証拠がないよ。
サトミ それって、青色の説明は、共有が出来ても、
反対に、青色の実感は、共有が出来ないわけ?
サトシ うん、これって、恐ろしいことだと思わない?
サトミ いくら、説明しても、理解してもらえない。
うん、そう言われると、怖い気がしてくるわ。
サトシ だよね、心の底から、分り合ったつもりで、
お互いに、解り合った、振りをしているだけ。
サトミ うわっ、恐ろしいことが、解かっちゃったわ。
サトシ うん、それで、これの、本当に恐ろしい所は、
この実感でさえ、何も分ち合えていないこと。
サトミ ……………………
CASE 部分 という 全体
サトシ うわっ、恐ろしいことを、悟っちゃったよ。
サトミ もう、あんたが、一体、何を悟ったってわけ?
サトシ 僕らは、原理的に、解り合えないんだけど、
心底から、通じ合う、可能性が有るってこと。
サトミ 無理よ、解り合えたと、思い込んでいるだけ。
実感が伝わるなんて、原理的に無いんだもん。
サトシ うん、それを踏まえて、可能性が有るんだよ。
部分の中に、全体が在れば、解り合えるんだ。
サトミ すべてが、自分も他人も、同じ構造だったら、
何より、自分を介しながら、他人を解せるの?
サトシ うん、自分と他人の間に、違いなんて無いと、
心から、認めた瞬間に、すべてを悟れるんだ。
サトミ じゃ、次第に解るでなく、一気に悟るわけ?
むしろ、悟ってないと、何も解かってないの?
サトシ そうだよ、自他の区別が、消失した瞬間に、
すべてを悟るんだ、すべてが自分だったって。
サトミ なるほど、あんたに言われて、考えてみると、
そんな気が、しないこともない、気がするわ。
サトシ いやいや、そんな解り方では、解り合えない。
サトミ ……………………
CASE ロゴス という パトス
サトシ 論理的なこと、ロゴスは、どういうものなの?
マナミ 外から浮かび上がる、因果の関係のことなの。
サトシ ロゴスが、外から縛るなら、逃げられるの?
マナミ 環状に回って、繰り返すけど、逃げられるの。
サトミ 感情的なこと、パトスは、どういうものなの?
マナミ 内から湧いて上がる、因果の実感のことなの。
サトミ パトスが、内から縛るなら、逃げられないの?
マナミ 感情に溺れて、行き詰まり、逃げられないの。
サトシ つまり、問題の解決にも、問題の回避にも、
ロゴスは、どちらにも使えてしまうってこと?
マナミ うん、理想論や感情論を使って、逃げるの。
本人は、逃げたと思わないから、要注意なの。
サトシ 逃げたか、逃げてないかは、どう判断するの?
マナミ 逃げると、パトスが、パッションになるの。
つまり、パトスが、受難に行き着いちゃうの。
サトミ 何よ何よ、あたしが、感情的で悪いってわけ?
マナミ パトスで、ロゴスを歪めなければ良いだけ。
サトミ ロゴスで理解したことを、実践すれば良いの?
マナミ うん、パトスが、情熱に行き着けば良いの。
サトミ ……………………!!