第一章 第四一話 対話編
CASE 理 の裏に 利
マサシ 理が生まれるとき、利が埋まれているのさ。
利のない理もないし、理のない利もないのさ。
マナミ 利が埋まれる、理って、どういうものなの?
マサシ 理とは、原因ならば結果、その因果のことさ。
マナミ 理に生まれる、利って、どういうものなの?
マサシ 利とは、原因ならば結果、その実感のことさ。
マナミ 因と果の、ならばの部分に、実感が現れるの?
マサシ そうさ、実感が有れば、理が正しいと思うし、
逆に、実感が無いと、理が正しいと想わない。
マナミ じゃあ、利が有るなら、理を辿ろうとして、
逆に、利が無いなら、理を辿ろうとしないの?
マサシ 例えば、AならばCに、実感が無いならば、
AならB、BならばCに、因果を分けるのさ。
マナミ 因果が、飛躍するなら、実感が生じる処まで、
更に、細かく分けないと、意味が生じないの?
マサシ そうさ、論理でさえも、恣意的なものなのさ。
マナミ そうかな、それって、論理が飛躍してないの?
マサシ そうさ、これでも、論理は飛躍していない。
ほら、利が無い理は、どうしても、辿れない。
マナミ ……………………!!
CASE 理 の先に 利
サトミ 目先の得である、利って、どういうものかな?
メグミ 利とは、理に順う時に、生まれて来るものよ。
サトミ すなわち、理が在る所に、利が現れてくるの?
メグミ そうよ、利が生まれるから、理を辿れるのよ。
サトミ 大局の得である、理って、どういうものかな?
メグミ 理とは、利に従う刻に、埋まれて行くものよ。
サトミ すなわち、利が有る処に、理が隠れているの?
メグミ そうよ、理が埋まれるから、利が生じるのよ。
サトミ あたしは、理なんて要らない、利が欲しいの。
利を得るため、理に順うなんて、嫌だからね。
メグミ そういうことを、言っているほど、損するよ。
今、利が有るのは、理が在ったから、だもん。
サトミ じゃ、誰かが作った、理に乗っているから、
自分が、知らない内に、利に与かれているの?
メグミ うん、知らない内に、理に乗ってしまうと、
いずれ、知らない内に、理を外れてしまうよ。
サトミ なるほど、理が消えると、利も消えるんだ。
損する前に、教えてくれて、本当に良かった。
メグミ うふっ、道理を辿らせるのは、実利だったね。
サトミ ……………………!!
CASE 理 という 利
サトシ 陰と陽を観じる、理って、どういうものかな?
アツシ 理とは、陰陽を解して、因果を観じることだ。
サトシ 陰と陽を感じる、利って、どういうものかな?
アツシ 利とは、陰陽を介して、因果を感じることだ。
サトシ 理にしても、利にしても、因果から生じるの?
アツシ そうだ、因と果が無ければ、理も利も無いな。
サトシ 理は、在りのまま、因果を観じる、感じで、
利とは、思いのまま、因果を感じる、感じだ。
アツシ そうだな、良いじゃないか、そんな感じだな。
サトシ うん、言っていたら、気が付いたんだけど、
たとえ、観じていても、感じているんだよね。
アツシ ああ、いかなる理だろうと、利が隠れている。
たとえ、客観的な理でも、主観が支えている。
サトシ じゃ、理を認めるか否かは、利に拠るのかな?
アツシ そうだ、利が無ければ、理を辿ることはない。
サトシ なるほど、良く解かるな、僕も、そう思うよ。
アツシ そうか、そう想ってしまう、根拠は何なんだ?
サトシ えっ、そんなの、君が教えてくれたからだよ。
アツシ そんな、隠すなよ、そう感じる利は何なんだ?
サトシ ……………………
CASE 利のない理 と 理のない利
サトミ 理と利、どちらの方を、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 因果を観じる、理って、どういうものかな?
メグミ 理とは、因果に生まれる、外見に臨むことよ。
サトミ 因果を感じる、利って、どういうものかな?
メグミ 利とは、因果に産まれる、中身を望むことよ。
サトミ 理を重んじて、利を軽んじると、どうなるの?
メグミ 利のない理なんて、貧しい理に過ぎないのよ。
サトミ じゃ、理に捕われて、利が消えてしまうの?
メグミ そうよ、利が滅すると、理を辿れなくなるよ。
サトミ 利を重んじて、理を軽んじると、どうなるの?
メグミ 理のない利なんて、乏しい利に過ぎないのよ。
サトミ じゃ、利に囚われて、理が歪んでしまうの?
メグミ そうよ、理が曲がると、利が巡らなくなるよ。
サトミ 理だけでは、利が通わず、理を辿れないし、
利ばかりでは、理が通らず、利が巡らないの?
メグミ そうよ、理と利、その両方が、必要になるの。
サトミ じゃ、利を介しながら、理を解していくの?
メグミ うふっ、理を負いながら、利を追っていくの。
サトミ ……………………!!