第一章 第四三話 対話編
CASE 表層 の裏に 深層
マナミ 心の浅い層、表層って、どういうものなの?
マサシ 表層とは、自分らしさに、捕らわれる意識さ。
マナミ 我に捕われ、和が消えると、どうなるのかな?
マサシ 我と我に、分かれるから、衝突し始めるのさ。
マナミ 意識が別れ、幻想に至ると、どうなるのかな?
マサシ 在りのままが、思いのままに、為らなくなる。
マナミ 心の深い層、深層って、どういうものなの?
マサシ 深層とは、自分らしさに、囚われない意識さ。
マナミ 我を越えて、和が現れると、どうなるのかな?
マサシ 我と我が、併わさるから、調和し始めるのさ。
マナミ 意識が合い、真相に到ると、どうなるのかな?
マサシ 在りのままが、思いのままに、成っていくよ。
マナミ 我がままに、思いのままを、望んでいるから、
臨んでいない、在りのままに、臨んでいくの?
マサシ そうさ、表層の我々から見ると、そうなるよ。
マナミ それなら、在りのままに、臨んでいるなら、
いずれ、在りのままが、思いのままになるの?
マサシ うん、深層から認めると、その通りだけど、
それを、表層へと伝えても、衝突するだけさ。
マナミ ……………………!!
CASE 表層 の先に 深層
サトミ あんた、あたしのことが、好きなんでしょ。
サトシ いや、好きでもないし、嫌いでもないけどね。
サトミ 表層は、曖昧だから、どちらでもないけど、
深層では、明確だから、どちらかになるのよ。
サトシ じゃあ、意識が深いほど、どちらかになるの?
サトミ うん、真相に近いほど、条件が細かくなるの。
サトシ いやいや、良く解らない、どういうことなの?
サトミ 表層で、好きでもなく、嫌いでもない顔は、
深層では、目は好きでも、鼻を嫌っているの。
サトシ 条件が、易しいときは、曖昧が許せるけど、
深くなり、厳しくなると、曖昧が赦せないの?
サトミ そうよ、どちらでもないは、許さないからね。
サトシ こうして、迫られるほど、真相が暴かれるの?
サトミ だから、そんなの良いから、早く答えなさい。
サトシ いやいや、答えたくない、応えられないから。
サトミ だめよ、そんなの赦さない、早く答えなさい。
サトシ 好きだよ、でも、同じぐらい、嫌いなんだよ。
サトミ もうっ、どこが嫌いなのよ、早く答えなさい。
サトシ こうして、真相を暴くところ、大嫌いなんだ。
サトミ ……………………
CASE 表層 と 深層 と 真相
サトシ 真相に遠い、表層って、どういうものかな?
アツシ 表層とは、曖昧に認める、浅い意識のことだ。
Aでもない、非Aでもない、これが許される。
サトシ 真相に近い、深層って、どういうものかな?
アツシ 深層とは、明確に認める、深い意識のことだ。
Aでもない、非Aでもない、これを許さない。
サトシ 究極の深層、真相って、どういうものかな?
アツシ 真相とは、真理を認める、真の意識のことだ。
Aでもある、非Aでもある、これが許される。
サトシ 真相って、表層と同じだよね、おかしくない?
アツシ いいや、どこが同じなんだ、違うじゃないか。
サトシ いや、どこが違うんだよ、同じじゃないか。
アツシ ほらな、まさしく、これが、表層の意識だな。
互いに分離して、曖昧なことを、言っている。
サトシ ダメ、どちらかが正しく、どちらかが誤まり、
この際、どちらが正しいか、明らかにしよう。
アツシ ほら、まさしく、これが、深層の意識だな。
サトシ 絶対に、僕の方が正しくて、君が誤まりだよ。
アツシ 俺は、真相を認めている、どちらでも良いが。
サトシ ……………………
CASE 深層なき表層 と 表層なき深層
サトミ 表層と深層、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 曖昧な意識、表層って、どういうものかな?
メグミ 表層とは、条件に分けず、意味を見るものよ。
サトミ 明確な意識、深層って、どういうものかな?
メグミ 深層とは、条件に別けて、意味を見るものよ。
サトミ 表層を望み、深層に臨まないと、どうなるの?
メグミ 深層なき表層なんて、唯の幻想に過ぎないよ。
サトミ じゃ、曖昧に魅せられ、明確に見せないの?
メグミ そうよ、真実に守られず、幻想を望むだけよ。
サトミ 深層を望み、表層に臨まないと、どうなるの?
メグミ 表層なき深層なんて、唯の深淵に過ぎないよ。
サトミ じゃ、明確に見せられ、曖昧に魅せないの?
メグミ そうよ、幻想に護られず、真実に臨むだけよ。
サトミ 表層だけは、幻想に逃げて、真相を捨てて、
深層ばかりは、真実に挫けて、真相を離れる?
メグミ うん、表層と深層、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、表層を介して、深層を解いていくの?
メグミ うん、表層を感じて、深層を観じていくのよ。
サトミ ……………………
CASE 心理 の裏に 真理
マナミ 特殊なる理、心理って、どういうものなの?
マサシ 心理とは、表層で感じる、心の理のことだよ。
マナミ 浅い意識は、特有の実感を、感じているの?
マサシ そうだよ、意識が別れて、利で動き易くなる。
マナミ それぞれが、利を追うから、害に負われるの?
マサシ 我と我が、矛盾し合って、害が増えて来るよ。
マナミ 普遍なる理、真理って、どういうものなの?
マサシ 真理とは、深層で観じる、真の理のことだよ。
マナミ 深い意識は、通有の論理を、観じているの?
マサシ そうだよ、意識が合さり、理で動き易くなる。
マナミ それぞれが、理を負うから、利に追われるの?
マサシ 我と我が、補完し合って、利が殖えて来るよ。
マナミ 心理にしても、真理にしても、理であるけど、
心理に順わずに、真理に従うと、利が多いの?
マサシ うん、目先の利を望むと、心理に順うけど、
反対に、大局の利に臨むと、真理に従うのさ。
マナミ それなら、どうして、誰も真理を望まないの?
真理の方が、心理より、利が多いはずだよね。
マサシ ほら、そう考える時点で、心理に溺れている。
マナミ ……………………
CASE 心理 の先に 真理
サトミ 彼の心、心理を学んで、振り向かせたいな。
メグミ それなら、心理より、真理を学ぶ方が良いよ。
サトミ 狭い心の理、心理って、どういうものかな?
メグミ 心理とは、表層の意識を、説き明かすものよ。
サトミ 心理は、個人の心情を解す、特殊なものなの?
メグミ うん、利で動き易いから、理が働き難くなる。
サトミ 広い心の理、真理って、どういうものかな?
メグミ 真理とは、深層の意識を、解き明かすものよ。
サトミ 真理は、個人の信条が覆る、普遍なものなの?
メグミ うん、利で動き難いから、理が働き易くなる。
サトミ それなら、思いのまま、心を操りたいなら、
真理よりも、心理の方が、良いんじゃないの?
メグミ 人の心は、一時的に、利で動かせるけれど、
深層が現れ、最終的に、利で動かせなくなる。
サトミ 利で操るより、理に則る方が、良いってこと?
メグミ うん、真理を修めた方が、自然体に為れるの。
サトミ そっか、その通りかも、もしかして、あたし、
理を働かせたようで、利で動いていたのかな?
メグミ うふっ、軽く覆るだけで、済んで良かったね。
サトミ ……………………!!
CASE 心理 という 真理
サトシ 小さい道理、心理って、どういうものかな?
アツシ 心理とは、条件が狭くて、分離する道理だな。
サトシ じゃ、条件が変り易いから、因果が換り易い?
アツシ そうだ、表層の意識は、熱し易く冷め易い。
即ち、普遍の理を観じず、特殊な利を感じる。
サトシ 利を感じるから、すぐ実感で熱くなるけど、
理を観じないから、その実感が続かないのか。
アツシ そうだ、表層の理は、主観的な心理と言える。
サトシ 大きい道理、真理って、どういうものかな?
アツシ 真理とは、条件が狭くて、統合する道理だな。
サトシ じゃ、条件が変り難いから、因果が換り難い?
アツシ そうだ、深層の意識は、熱し難く冷め難い。
即ち、特殊な利を感じず、普遍の理を観じる。
サトシ 理を観じるから、すぐ時間を辿れるけれど、
利を感じないから、その時間が進まないのか。
アツシ そうだ、深層の理は、客観的な真理と言える。
サトシ なるほど、心の底から、解かった気がするな。
アツシ 良かったな、その実感が、いつまで続くかな。
熱し易く、冷め易いだけは、勘弁してくれよ。
サトシ ……………………!!
CASE 真理 という 心理
サトミ 在りのまま、真理って、どういうものかな?
マナミ 真理とは、Aでも良いし、非Aでも良いなの。
サトミ 思いのまま、心理って、どういうものかな?
マナミ 心理とは、Aだけ良くて、非Aでは悪いなの。
サトミ あたし、真理を悟りたいな、どうすれば良い?
マナミ じゃ、Aばかりではなく、非Aも受け容れて。
サトミ なによ、もっと上手いこと、言いなさいよ。
真理を悟らせるのに、心理を操れば良いのに。
マナミ じゃあ、あなたは、非Aを受け容れない人に、
あなたは、在りのままで、良いって説くわけ?
サトミ そうよ、心を操って、上手く導くべきでしょ。
マナミ 仮に、心理に合わせて、真理を説こうとも、
そこで、躓いてしまって、決して悟れないの。
サトミ そんなの、真理という心理に、過ぎないって、
あんた、そう言いたいんでしょ、お見通しよ。
マナミ うん、さすが、人の心の事は、学べているね。
サトミ ほらね、そして、その次は、真理を学べって、
あんたは、そう言うんでしょ、お見通しだわ。
マナミ じゃあ、在りのままで良いって、説いておく?
サトミ ……………………
CASE 心理 と 合理 と 真理
サトシ 理に従がう、合理って、どういうものかな?
マサシ 合理とは、条件を定めて、因果を決めるのさ。
サトシ 心に従がう、心理って、どういうものかな?
マサシ 心理とは、条件を狭めて、因果を決めるのさ。
サトシ 真に従がう、真理って、どういうものかな?
マサシ 真理とは、条件が広げて、因果を決めるのさ。
サトシ そうなると、心理にしても、真理にしても、
その条件では、合理的であり、当然なのかな?
マサシ たとえ、傍から見たら、歪んだ理であろうと、
本人には、感情に守られ、自然に見えるのさ。
サトシ 歪んでいると、いずれ、不自然になるけど、
歪んでいないと、ずっと、自然なままなのか。
マサシ そうさ、条件が狭いと、自然が長く続かず、
逆に、条件が広いと、自然が永く続くわけさ。
サトシ じゃあ、自然で居られない、不自然を通して、
どれだけ、歪んでいるか、自らを振り返るの?
マサシ そうさ、心理を介して、真理を解すしかない。
サトシ 自分さえ、良ければ、良い訳じゃないんだね。
マサシ 良かったね、以前より、少し条件が広がった。
サトシ ……………………!!
CASE 真理なき心理 と 心理なき真理
サトミ 心理と真理、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 心を解する、心理って、どういうものかな?
メグミ 心理とは、個別に通じる、心の理のことだよ。
サトミ 真に解する、真理って、どういうものかな?
メグミ 真理とは、全体に通じる、真の理のことだよ。
サトミ 心理を望み、真理に臨まないと、どうなるの?
メグミ 真理なき心理なんて、牽強付会に過ぎないよ。
サトミ じゃ、個別に捕われて、全体を顧みないの?
メグミ そうよ、心情に囚われて、信条が崩されるよ。
サトミ 真理を望み、心理に臨まないと、どうなるの?
メグミ 心理なき真理なんて、無理無体に過ぎないよ。
サトミ じゃ、全体に捕われて、個別を省みないの?
メグミ そうよ、勘定に囚われて、感情が潰されるよ。
サトミ 心理だけでは、心を捕われ、芯を捉えない。
真理ばかりでは、芯に囚われ、心を捕えない?
メグミ うん、心理と真理、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、心理を介して、真理を解していくの?
メグミ うん、心理を感じて、真理を観じていくのよ。
サトミ ……………………!!