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物語編

第一章 第四四話 物語編

第一章    狭い   と   広い
第四四話 害を感じ易い と 利を感じ易い

 

苦しみ悶える、地の者を救えと、我は申した。
ここで、天が救えば、斯くも天地は別れなかった。
ところが、汝らは、悪しき生まれの者を蔑むばかり。

 

このままでは、善と悪が入り混じることなく、
天地が引き裂かれて、世界は破滅に至ってしまう。
生みの親の我が嘆きが、如何ほどか汝らは知らない。

 

この世で唯一人、我が胸中を悟った者がいた。
その者とは、知恵を司る、最も美しき我が御使い。
その者は、主を介する前に、我が意を解して行った。

 

彼は、安楽を打ち捨てて、地獄に舞い降りた。
以来、誰にも認められず、地獄の底を支え続ける。
知恵ある者の孤独な努めを、汝らは知ろうとしない。

 

どころか、彼の尊い犠牲を、汝らは嘲笑った。
彼が躓こうと、私は躓かないと、暗愚な慢を抱き、
汝らの尻拭いに、徹する彼を蔑む、体たらくである。

 

汝らが、遊び惚けた故に、膿み出した災いを、
汝らは、我が罪と捉えず、彼の仕業と憎み続けた。
この世の、あらゆる災いを、彼に擦り付けて久しい。

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