第一章 第四四話 対話編
CASE 小我 の裏に 大我
マナミ 細やかな我、小我って、どういうものなの?
マサシ 小我とは、自分らしさに、捕われる我なのさ。
マナミ 差を望んで、我が現れると、どうなるのかな?
マサシ 好きや嫌いが、強くなり、良くを突き詰める。
マナミ 思いのまま、突き詰めると、どうなるのかな?
マサシ 嫌いなものが、切り捨て、器が小さくなるよ。
マナミ 大いなる我、大我って、どういうものなの?
マサシ 大我とは、自分らしさに、囚われない我だよ。
マナミ 和に臨んで、我が消えると、どうなるのかな?
マサシ 好きや嫌いが、弱くなり、空くを受け容れる。
マナミ 在りのまま、受け容れると、どうなるのかな?
マサシ 嫌いなものを、救い上げ、器が大きくなるよ。
マナミ 良く突き詰めると、我が器が小さくなるし、
空くを受け容れると、我が器が大きくなるの?
マサシ そうさ、自分らしさは、諸刃の剣なんだよ。
他を、切り捨てると、自らも斬り棄てられる。
マナミ う~ん、それでも、自分らしさは大事なの。
あなたの、言うことは、受け容れられないの。
マサシ 良いよ、受け容れるのは、突き詰めてからで。
マナミ ……………………!!
CASE 小我 の先に 大我
サトミ 小さな意識、小我って、どういうものかな?
メグミ 小我とは、総じて損する、別れた我のことよ。
サトミ 小さい我に、害が多いのは、どうしてなの?
メグミ 誰か、得をするとき、誰か損すると考えて、
互いに、利を奪い合い、害を与え合うからよ。
サトミ 利に囚われ、理を歪めるから、害が増えるの?
メグミ そうだよ、無理が生じると、不自然になるの。
サトミ 大きな意識、大我って、どういうものかな?
メグミ 大我とは、総じて得する、合せた我のことよ。
サトミ 大きい我に、利が多いのは、どうしてなの?
メグミ 誰か、得をするとき、我も得すると考えて、
互いに、利を譲り合い、利が巡り合うからよ。
サトミ 理を通して、利が流れるから、利が殖えるの?
メグミ そうだよ、道理に委ねると、自然体になるの。
サトミ じゃあ、欲に捕らわれて、理を歪めるほど、
それこそ、利が滞って、無理に望んでしまう?
メグミ そうよ、自然に委ねると、自然に臨むのにね。
サトミ それなら、これからは、あたしもそうするよ。
メグミ うふっ、自然にやってね、欲張っちゃダメよ。
サトミ ……………………!!
CASE 小我 という 大我
サトシ 狭く感じる、小我って、どういうものかな?
マサシ 小我とは、受け容れ難い、小さい器のことさ。
サトシ 器が小さく、感じ易いほど、どうなるのかな?
マサシ それこそ、近くを観じて、条件が狭くなるよ。
サトシ 部分として、正しい世界を、作り上げるの?
マサシ 理が歪み、利が滞るから、害を感じ易いのさ。
サトシ じゃあ、利を感じ易いほど、害も感じ易いの?
マサシ そうだよ、狭く感じると、利も害も増えるよ。
サトシ 広く感じる、大我って、どういうものかな?
マサシ 大我とは、受け容れ易い、大きな器のことさ。
サトシ 器が大きく、感じ難いほど、どうなるのかな?
マサシ それこそ、遠くを観じて、条件が広くなるよ。
サトシ 全体として、正しい世界を、創り上げるの?
マサシ 理が通り、利が巡るから、害を感じ難いのさ。
サトシ じゃあ、利を感じ難いほど、害も感じ難いの?
マサシ そうだよ、広く感じると、利も害も減るのさ。
サトシ あまり、利害を感じず、理を辿って行けば、
すべてが、良いと観じて、見えて来るわけか。
マサシ うん、ほら、すっきりして、良く観じたかい?
サトシ ……………………!!
CASE 大我 という 小我
サトシ 小さい自我、小我って、どういうものかな?
アツシ 小我とは、条件が狭くて、分離する自我だな。
サトシ じゃ、条件が変り易いから、実感も換り易い?
アツシ そうだ、表層の自我は、利も害も感じ易い。
即ち、全体の理を観じず、部分の利を感じる。
サトシ 利を感じるから、すぐ実感で熱くなるけど、
害まで感じるから、その実感が覆ってしまう。
アツシ そうだ、小我の利は、部分的な利と言えるな。
サトシ 大きい自我、大我って、どういうものかな?
アツシ 大我とは、条件が広くて、統合する自我だな。
サトシ じゃ、条件が変り難いから、実感も換り難い?
アツシ そうだ、深層の自我は、利も害も感じ難い。
即ち、部分の利を感じず、全体の理を観じる。
サトシ 利を感じないから、すぐ利を放せるけれど、
害まで感じないから、その利が戻ってしまう。
アツシ そうだ、大我の利とは、全体的な利と言える。
サトシ じゃ、全体の利のことを、考えるべきなのか。
今まで、自分のことばかり、考えてしまった。
アツシ その実感が、覆らないことを、祈っているよ。
サトシ ……………………!!
CASE 小我 と 自我 と 大我
サトシ 自分らしさ、自我って、どういうものなの?
マサシ 自我とは、好きなものを、集める器のことさ。
サトシ じゃあ、器を広げたいとき、どうするのかな?
どんどん、自分らしさを、集めて行けばいい?
マサシ いや、逆さ、自分らしさは、忘れた方がいい。
サトシ どうして、自分らしさを、突き詰めないの?
マサシ 我に囚われて、好き嫌いが、強くなるからだ。
サトシ 好き嫌いが、強くなると、どうなるのかな?
マサシ 嫌いなものを、切り捨てて、器が小さくなる。
サトシ 好き嫌いが、弱くなると、どうなるのかな?
マサシ 嫌いなものを、受け容れて、器が大きくなる。
サトシ なるほど、自分らしさを、突き詰めるほど、
反対に、自分らしさを、切り捨てているのか。
マサシ うん、自分らしくないを、受け容れるほど、
本当の、自分らしさを、受け容れているのさ。
サトシ その先に、どんな自分が、待っているのかな?
マサシ それは、在りのままの、自然体の自分だよ。
サトシ なるほど、そんな自分は、想像も付かないや。
マサシ いやそれが、一周、回って、現在の自分だよ。
サトシ ……………………!!
CASE 大我なき小我 と 小我なき大我
サトミ 小我と大我、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 器が小さい、小我って、どういうものかな?
メグミ 小我とは、部分を収める、個の器のことだよ。
サトミ 器が大きい、大我って、どういうものかな?
メグミ 大我とは、全体を納める、公の器のことだよ。
サトミ 小我を望み、大我に臨まないと、どうなるの?
メグミ 大我なき小我なんて、唯の小者に過ぎないよ。
サトミ じゃ、部分に捕われて、全体を顧みないの?
メグミ そうよ、利害に囚われて、大局を捕えないよ。
サトミ 大我を望み、小我に臨まないと、どうなるの?
メグミ 小我なき大我なんて、只の空者に過ぎないよ。
サトミ じゃ、全体に捕われて、部分を省みないの?
メグミ そうよ、利害に囚われず、小局を捉えないよ。
サトミ 小我だけは、分別が強くて、理を負えないし、
大我ばかりは、分別が弱くて、利を追えない?
メグミ うん、小我と大我、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、小我を究めて、大我を極めていくの?
メグミ うん、小我を超えて、大我を越えていくのよ。
サトミ ……………………!!