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物語編

第一章 第四五話 対話編

CASE 楽 の裏に 苦

 

マナミ 望み易いもの、楽って、どういうものなの?
マサシ 楽とは、実感が濃いから、時間が早いものさ。
マナミ 楽は、望んでいるから、実感が濃くなるの?
マサシ 反対に、望んでなければ、実感は薄くなるよ。
マナミ 楽は、実感が濃いほど、密度が高くなるの?
マサシ そうさ、密度が大きいと、期間は短くなるよ。
マナミ それなら、期間が過ぎると、どうなるのかな?
マサシ 飽きるから、厭きながら、臨むことになるよ。
マナミ 臨み難いもの、苦って、どういうものなの?
マサシ 苦とは、実感が薄いから、時間が遅いものさ。
マナミ 苦は、臨んでないから、実感が薄くなるの?
マサシ 反対に、臨んでいるなら、実感は濃くなるよ。
マナミ 苦は、実感が薄いほど、密度が低くなるの?
マサシ そうさ、密度が小さいと、期間は長くなるよ。
マナミ それなら、期間が空くほど、どうなるのかな?
マサシ 漏れるから、望みながら、臨むことになるよ。
マナミ 求めると、早く過ぎて、飽きも早くなるし、
    逃げるほど、遅く過ぎて、空きも遅くなるの?
マサシ そうだよ、苦しくても、認めたら一瞬なのさ。
マナミ ……………………!!

 


 

CASE 楽 の先に 苦

 

サトミ 因果の流れ、時間って、どういうものかな?
メグミ 因果を介して、実感が満ちる、期間のことよ。
サトミ 時間の流れ方は、実感に拠って、異なるの?
メグミ 楽と感じるか、苦と感じるか、それで変るよ。
サトミ 楽しいと感じて、望んでいると、どうなるの?
メグミ 時間が、早く流れるために、飽き易くなるよ。
サトミ じゃ、飽き難くするには、どうすれば良いの?
メグミ 楽しみを、分け与えるほど、飽き難くなるよ。
サトミ 苦しいと感じて、臨んでないと、どうなるの?
メグミ 時間が、遅く流れるために、空き難くなるよ。
サトミ じゃ、飽き易くするには、どうすれば良いの?
メグミ 苦しみを、受け容れるほど、空き易くなるよ。
サトミ 望むと、時は早く過ぎて、楽しみが消えて、
    臨まない、時は遅く過ぎて、苦しみが続くの?
メグミ そうよ、楽を望むから、苦に臨んでしまう。
    即ち、楽を追っていると、苦を負っているの。
サトミ じゃあ、総べてを望んだら、どうなるのかな?
    即ち、楽しみも苦しみも、総べてに臨んだら?
メグミ 移り変る、現在だけが、この瞬間に止まるよ。
サトミ ……………………!!

 


 

CASE 楽 という 苦

 

サトミ どうして、次から次へと、苦が生まれるの?
マナミ いつも、楽が生まれるとき、苦が埋まれるの。
    それでも、楽を望むから、苦に臨んでいくの。
サトミ 例えば、食べる楽しみなら、どうなるのかな?
マナミ 食す楽は、喰せない苦しみを、生んでいるの。
サトミ 例えば、眠れる楽しみなら、どうなるのかな?
マナミ 眠る楽は、睡れない苦しみを、生んでいるの。
サトミ 例えば、遊べる楽しみなら、どうなるのかな?
マナミ 遊ぶ楽は、游べない苦しみを、生んでいるの。
サトミ つまり、どんな意味にも、表と裏が有るけど、
    同じ様に、どんな意識にも、楽と苦が在るの?
マナミ うん、楽しみと苦しみは、相対的なものなの。
サトミ じゃあ、楽だけの愉しみは、絶対に無いわけ?
マナミ うん、楽しいだけなんて、絶対に無いもの。
サトミ う~ん、一つぐらいは、有るような気がする。
マナミ ない、楽しいだけなんて、絶対に無いもの。
サトミ う~ん、一つぐらいは、有るような気がする。
マナミ こうして、思い込むから、苦しみが生まれる。
    本当は、苦しみなのに、楽しいと想い込むの。
サトミ ……………………

 


 

CASE 苦 という 楽

 

マナミ 楽しみの量と、苦しみの量は、必ず等しいの。
    誰でも、楽しむ分だけ、苦しむことになるの。
サトシ 本当かな、楽しみの方が、多いと思うけど。
マナミ それは、苦しみが裏に、隠れているだけなの。
    必ず、楽が生まれるから、苦が埋まれている。
サトシ 本当かな、それって、例えば、どういうこと?
マナミ 誰かが、勝っているとき、誰かが負けている。
    誰か、得をするときに、誰かが損をしている。
サトシ 全員が、得をすることも、有るんじゃないの?
マナミ 先に得をするときは、後で損をしてしまう。
    先に楽しんでしまうと、後で苦しんでしまう。
サトシ う~ん、本当だね、楽の裏に苦があるのか。
    これだと、これから、何も楽しめなくなるね。
マナミ ううん、それだからこそ、その裏も言えるの。
    即ち、楽しめないから、苦しまなくもなるの。
サトシ そっか、苦しむから、楽しめない、の裏には、
    楽しめないから、苦しまないが、あるんだね。
マナミ そうよ、そう考えれば、捨てたものじゃない。
    こうして、楽と苦の量は、必ず等しくなるの。
サトシ ……………………!!

 


 

CASE 楽 と 時 と 苦

 

サトシ 因果が流れる、時って、どういうものかな?
マサシ 時とは、実感を得るため、因果を辿ることさ。
サトシ 因果を求める、楽って、どういうものかな?
マサシ 楽とは、時を掛けないで、実感を得ることさ。
サトシ 因果を避ける、苦って、どういうものかな?
マサシ 苦とは、時を掛けながら、実感を得ることさ。
サトシ じゃ、進んで実感するほど、楽を感じるし、
    反対に、進んで実感しないと、苦を感じるの?
マサシ 苦と楽に、絶対的な違いなんて、何も無いよ。
サトシ 時を掛けて、楽を味わうと、どうなるのかな?
マサシ 楽しいことに、飽きが生じて、苦しくなるよ。
サトシ 時を掛けず、苦を味わうと、どうなるのかな?
マサシ 苦しいことに、空きが生じて、楽しくなるよ。
サトシ 楽しくても、望み過ぎると、苦しくなるし、
    苦しくたって、臨み始めると、楽しくなるの?
マサシ 楽と苦に、絶対的な違いなんて、何も無いよ。
サトシ う~ん、本当かな、僕には、そうは思えない。
    もし、そうなら、この世界は、苦しみだけだ。
マサシ 大丈夫、時間を掛けて、実感を得れば良いよ。
サトシ ……………………

 


 

CASE 苦のない楽 と 楽のない苦

 

サトミ 楽と苦、どちらの方を、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 望み易いもの、楽って、どういうものかな?
メグミ 楽とは、実感が濃いから、時間が短いものよ。
サトミ 臨み難いもの、苦って、どういうものかな?
メグミ 苦とは、実感が薄いから、時間が長いものよ。
サトミ 楽を重んじて、苦を軽んじると、どうなるの?
メグミ 苦のない楽なんて、飽きが早くなるだけだよ。
サトミ つまり、楽を感じようと、苦を観じないの?
メグミ 楽の中に、苦を見ないから、楽に飽くだけよ。
サトミ 苦を重んじて、楽を軽んじると、どうなるの?
メグミ 楽のない苦なんて、空きが遅くなるだけだよ。
サトミ つまり、苦を感じようと、楽を観じないの?
メグミ 苦の中に、楽を見ないから、苦が続くだけよ。
サトミ 楽だけでは、楽に捕われ、苦に変っていき、
    苦ばかりでは、苦に囚われ、苦が続いていく?
メグミ そうよ、楽と苦、その両方が、必要になるの。
サトミ じゃ、苦を負いながら、楽を追っていくの?
メグミ うふっ、楽を介しながら、苦を解していくの。
サトミ ……………………!!

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