物語編
第一章 第四九話 物語編
第一章 倫理 と 道理
第四九話 是と非を説く と 因と果を解く
〔恰かも、対岸の火事の如く、上から下に見て、
人を助け上げることが、救いだと汝らは考えるか。
それでは、人を創る前に、戻るだけだと解らんのか。〕
〔地獄にせよ、人間にせよ、天の捨て子である。
来世である、彼らを見て、我が身と捉えない限り、
この型からは、汝らも、抜け出せないと判らんのか。〕
〔神の怒りは、無智な天人には、届かなかった。
人々が救われて、喜んでいるのに、何が悪いのか。
悟る必要などない、天界に戻れたら、十分でないか。〕
〔この神は、厳し過ぎると、汝らは神を裁いた。
その刹那、神は穢がされ、相対の地に落とされて、
一元の神は、創造主として、梵天の位に就かされた。〕
〔実際は、一元は汚されず、二元に隠れるのみ。
世界は、欲を司る欲界と、徳を司る色界に分かれ、
神に倣い、知恵を望む者は、後者の菩薩界に赴いた。〕
〔神の真意を悟り、色界に集いし、古の菩薩は、
天から地を眺め、救い上げることを、良しとせず、
以来、人の世に生れ落ち、世の型を創り続けている。〕
老師は、添えていた手で、私の肩を握り締めた。
其の強く、優しい力が、師との縁を伝えてくれる。
心が激しく、揺さ振られ、魂から涙が湧き上がった。