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物語編

第一章 第五四話 対話編

CASE 偶然 の裏に 必然

 

マナミ 意味が無い、偶然って、どういうものなの?
マサシ 偶然とは、果を見とめて、因を認めないこと。
    自我が、自然を歪めるほど、偶然に感じるよ。
マナミ 何故、自然を認めないと、偶然に見えるの?
マサシ 自我は、好きと嫌いに、自然を分けてしまい、
    醜い所を、見なくなって、原因を見なくなる。
マナミ じゃあ、原因を認めず、意味を見とめないの?
マサシ うん、意義が無いものに、自然が見えるのさ。
マナミ 意味が有る、必然って、どういうものなの?
マサシ 必然とは、果を見とめて、因も認めることさ。
    自我が、自然に委ねるほど、必然に観じるよ。
マナミ 何故、自然を認めるほど、必然に見えるの?
マサシ 自然は、原因と結果で、そもそも出来ている。
    総べてを、見とめるなら、原因が見えてくる。
マナミ じゃあ、原因を認めて、意味を見とめるの?
マサシ うん、意義が有るものに、自然が見えるのさ。
マナミ そっか、自然というものは、面白いものだね。
    醜い処を、隠さない方が、美しく蘇るなんて。
マサシ そうさ、感じている以上に、世界は美しいよ。
マナミ ……………………!!

 


 

CASE 偶然 の先に 必然

 

サトミ 意味が寡い、偶然って、どういうものかな?
メグミ 偶然とは、意味を感じず、自然を見ることよ。
サトミ 意味が多い、必然って、どういうものかな?
メグミ 必然とは、意味を観じて、自然を見ることよ。
サトミ 在りのまま、自然には、意味なんて無いよ。
メグミ そうよ、自然に、意味を与えるのは、自我よ。
    でも、だからこそ、どんな意味も与えられる。
サトミ ううん、意味なんて、そもそも無いんだから、
    どんな意味を与えても、それは嘘でしかない。
メグミ そうよ、自然に、真偽を与えるのも、自我よ。
    でも、だからこそ、それが嘘でも与えられる。
サトミ 解からないよ、それって、どういうことなの?
メグミ 最初は、思いのまま、想い込んでいようと、
    最終的に、在りのまま、思い知らされていく。
サトミ そっか、たとえ、それが、幻想の意味でも、
    最終的に、真実に至るなら、意味が有るのか。
メグミ むしろ、幻想が無ければ、真実を悟れないよ。
サトミ 自然って、自分が想うより、遥かに深かった。
メグミ うふっ、どんな意味でも、与えられるでしょ。
サトミ ……………………!!

 


 

CASE 偶然 という 必然

 

アキラ 人類の歴史に、偶然というものは、何も無い。
    すべてを認める側に立てば、すべてが必然だ。
マコト そうね、あなたが言うと、嘘には聞こえない。
    あなたは、歴史の舞台裏で、支えて来たもの。
アキラ 人々は、舞台上の者しか、認めようとしない。
    舞台裏で、働く者達を、見とめようとしない。
マコト だからって、彼方が、舞台に上がって良いの?
アキラ 表の動きの裏には、裏の動きが有るものだ。
    表だけ追えば偶然で、裏まで負うなら必然だ。
マコト あら、秘密を明かしちゃって、本当に良いの?
アキラ 良いんだ、たとえ、真実を話したとしても、
    認められない限りは、幻想に聞こえてしまう。
マコト そうね、自分で認めず、人に認めて貰う限り、
    永遠に真実には辿り着けない、これが真実ね。
アキラ ああ、自分以外の者に、根拠を求めた途端、
    必然を観じずに、偶然に感じてしまうからな。
マコト それを良いことに、時折り、表に出て来ては、
    それとなく、気づきを与えて、裏に潜むのね。
アキラ こうして、表に現れたのも、偶然ではないな。
マコト ……………………!!

 


 

CASE 偶然 と 自然 と 必然

 

サトシ 在りのまま、自然って、どういうものかな?
アツシ 自然とは、自我を越えて、当然に移るものだ。
サトシ 思い忘れる、偶然って、どういうものかな?
アツシ 偶然とは、自然に従わず、自我に映るものだ。
サトシ 想い起こす、必然って、どういうものかな?
アツシ 必然とは、自然に順って、自我に映るものだ。
サトシ う~ん、偶然と自然と必然、何処から斬ろう?
アツシ 先ず、最初に、自然と自我に、分かれていく。
サトシ その時、自然は、当り前で、自我は有り難い。
アツシ 次に、自我が、偶然と必然に、別かれていく。
サトシ その時、偶然は、当り前で、必然は有り難い。
アツシ じゃ、自然と必然の違い、それが何か解るか?
サトシ 自然は、在りのままが、当り前に表われて、
    必然では、在りのままが、有り難く現われる?
アツシ 必然は、自然と自我、両者が合致するとき、
    自我から、湧き上がる、自然な実感なことだ。
サトシ そっか、自我を介すから、自然に帰っても、
    そのまま、当り前に還らず、有り難く感じる。
アツシ そうだ、良く解かったな、これも、必然だな。
サトシ ……………………!!

 


 

CASE 必然なき偶然 と 偶然なき必然

 

サトミ 偶然と必然、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 意味が寡い、偶然って、どういうものかな?
メグミ 偶然とは、因果を忘れて、自然を見ることよ。
サトミ 意味が多い、必然って、どういうものかな?
メグミ 必然とは、因果を覚えて、自然を見ることよ。
サトミ 偶然を望み、必然に臨まないと、どうなるの?
メグミ 必然なき偶然なんて、唯の必然に過ぎないよ。
サトミ じゃ、因果が薄くなり、意味が減ってくるの?
メグミ そうよ、有り難くなって、因果を覚えてくる。
サトミ 必然を望み、偶然に臨まないと、どうなるの?
メグミ 偶然なき必然なんて、只の偶然に過ぎないよ。
サトミ じゃ、因果が濃くなり、意味が増えてくるの?
メグミ そうよ、当り前になって、因果を忘れてくる。
サトミ 偶然だけでは、消え過ぎて、現れて来るし、
    必然ばかりでは、現れ過ぎて、消えて行くの?
メグミ うん、偶然と必然、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、偶然を介し、必然を解していくの?
メグミ そうなの、必然を望み、偶然に臨んでいくの。
サトミ ……………………!!

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