第一章 第五八話 対話編
CASE 愛情 の裏に 憎悪
マナミ 欲に塗れる、愛情って、どういうものなの?
マサシ 愛情とは、相応を望んで、相手を利すことさ。
マナミ 愛情は、相手を利して、自分を利しているの?
マサシ そうだよ、相手を透して、自分を愛している。
マナミ じゃ、見返りが有れば、相手を利するけど、
反対に、見返りが無いと、相手を見なくなる?
マサシ うん、相応を望めれば、相手を愛するけど、
それ故、相応に臨めない、相手は認めないよ。
マナミ 欲に溺れる、憎悪って、どういうものなの?
マサシ 憎悪とは、相応を望んで、相手を害すことさ。
マナミ 憎悪は、相手を害して、自分を利しているの?
マサシ そうだよ、相手を通して、自分を愛している。
マナミ じゃ、見返りが有れば、相手を害するけど、
反対に、見返りが無いと、相手を見なくなる?
マサシ うん、相応を望めれば、相手を憎むけれど、
それ故、相応に臨めない、相手は認めないよ。
マナミ じゃ、利と害を分けたから、愛と憎が別れた?
マサシ そうさ、欲に捕われて、愛憎に囚われたのさ。
それこそ、欲を越えれば、真の愛に変わるよ。
マナミ ……………………!!
CASE 愛情 の先に 憎悪
サトミ 利して愛す、愛情って、どういうものかな?
メグミ 愛情とは、欲に捕われて、相手を利すことよ。
サトミ 害して愛す、憎悪って、どういうものかな?
メグミ 憎悪とは、欲に囚われて、相手を害すことよ。
サトミ そうすると、愛情にしても、憎悪にしても、
どちらも、欲を捉えることは、同じなのかな?
メグミ 欲を捕えると、情と憎が、同時に生じるし、
欲を囚えないと、憎と情が、同時に滅するよ。
サトミ じゃ、欲を使えていると、愛情が表れるし、
反対に、欲が支えてくると、憎悪が現れるの?
メグミ 捉えても、捕われないと、愛情に留まるし、
捕えてから、囚らわれると、憎悪に止まるよ。
サトミ なるほど、愛情を楽しみ、欲を使っていると、
次第に、憎悪に苦しみ、欲に疲れてくるのね。
メグミ うん、欲を楽しめるのは、先の方だけなの。
だから、欲が苦しくなれば、振り返らないと。
サトミ そもそも、欲を認めない方が、良かったの?
メグミ ううん、欲が毒に堕ちなければ、良かったの。
真の愛に、毒が混じったから、憎に落ちたの。
サトミ ……………………!!
CASE 愛情 という 憎悪
サトミ ねぇ、あたし、あなたのことが、大好きなの。
アツシ それは、とても、光栄なことだが、そもそも、
君は、俺のことを、どれだけ知っているんだ?
サトミ とても、容姿が良くて、魅力が渝れているの。
アツシ そんなの、外なる観じ方、外見に過ぎないな。
俺が、魅力的で無くなれば、君は嫌いになる。
サトミ とても、性格が良くて、知性が溢れているの。
アツシ それでも、内なる感じ方、中身に過ぎないな。
俺が、知性的で亡くなれば、君は嫌いになる。
サトミ ううん、結局、そんなことは、どうでも良い。
あたしは、あなたが大好きなの、それで十分。
アツシ そうか、ありがとう、じゃあ、これで充分か。
サトミ あなたは、あたしの事、愛してくれないの?
アツシ すると、愛されるために、愛していたわけか?
サトミ どうして、そんな酷いこと、あなたは言うの?
アツシ 君は、見返りを求めて、愛しているだけだ。
だから、見返りが無いと、憎んでしまうんだ。
サトミ ひどいわ、あなたって、こんな人だったのね。
見損ったわ、もうっ、あなたなんか、大嫌い!
アツシ ……………………
CASE 憎悪なき愛情 と 愛情なき憎悪
サトミ 愛情と憎悪、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 情で楽しむ、愛情って、どういうものかな?
メグミ 愛情とは、感情に塗れて、相手を愛すことよ。
サトミ 情で苦しむ、憎悪って、どういうものかな?
メグミ 憎悪とは、感情に塗れて、相手を憎むことよ。
サトミ 愛情を望み、憎悪に臨まないと、どうなるの?
メグミ 憎悪なき愛情なんて、愛情が足りないだけよ。
サトミ じゃ、憎らしいほどに、愛してないのかな?
メグミ そうよ、感情が昂るほど、相手を愛してない。
サトミ 憎悪を望み、愛情に臨まないと、どうなるの?
メグミ 愛情なき憎悪なんて、憎悪が足りないだけよ。
サトミ じゃ、愛おしいほどに、憎んでないのかな?
メグミ そうよ、感情が篭るほど、相手を憎んでない。
サトミ 愛情だけは、裏まで愛せず、浅いだけだし、
憎悪ばかりは、裏まで憎めず、甘いだけなの?
メグミ うん、愛情と憎悪、その両方が、必要なのよ。
サトミ そっか、愛情を介し、憎悪を解していくの?
メグミ そうなの、憎悪を透し、愛情を徹していくのよ。
サトミ ……………………!!