物語編
第二章 第一話 物語編
第二章 陽気 と 陰気
第一話 気が生まれる と 気が埋まれる
あたかも、陽を究めると、陰に極まるかの如く、
扉から、精強な兵士たちが、雪崩れを打って来た。
清浄なる、光輝く空間が、土足で踏み躙られていく。
私の眼の前で、老子が荒々しく、引き摺られる。
その汚い手を放せ、私は、老子を守ろうとするが、
羽交い絞めから、関節を極められ、身動き出来ない。
「老子よ、逃げて下さい、誰も貴方を損えない。」
魂魄を以って訴えるも、老子は慌てる様子がない。
そして、飄々とした体で、為されるがままに応える。
〔道が廃れて徳が現れ、徳が廃れて法が現れる。
今の世は、法の時代、そんな時にも徳を忘れるな。
悪い子が我が子ならば、悪い法もまた我が法である。〕
〔徳を司る者よ、私と同じ轍を踏む必要はない。
この軛を断つため、愛する息子らに命を捧げよう。
我が命を守ろうとするな、我が命を果たそうとせよ。〕
〔智を司る者よ、徳の何たるか、法で説くなよ。
徳を法で説いては、徳と名づけた、法に過ぎない。
そうかと言って、法で説かなければ、徳が解らない。〕
いやいや、これは難儀なことだ、困ったものよ。
そう言って、場違いに笑いながら、消えて行った。
その裏で、完全に、私の顔から、笑みが消え失せた。