第二章 第二話 対話編
CASE 天 の裏に 地
マナミ 地の上に在る、天って、どういうものなの?
マサシ 天とは、地が隠れるとき、表れて来るものさ。
マナミ 天の下に在る、地って、どういうものなの?
マサシ 地とは、天が匿れるとき、現れて来るものさ。
マナミ 天の捉え方と、地の捕え方は、違っているの?
マサシ そうさ、天と地の観じ方は、全く逆になるよ。
マナミ じゃ、地で良く捕えると、どう捉えているの?
マサシ 天では、地で良いものほど、悪く見えるのさ。
マナミ じゃ、地で悪く捕えると、どう捉えているの?
マサシ 天では、地で悪いものほど、良く見えるのさ。
マナミ お互いに、隠れているものを、見ているから、
天と地では、その感じ方が、全く逆になるの?
マサシ そうだよ、条件が覆って、善悪が真逆になる。
マナミ つまり、地から見ても、天から見ないから、
見え方が、凝り固まって、偏ってしまうのね。
マサシ そうさ、地から臨むことも、重要なことで、
同じだけ、天から臨むことも、必要なことさ。
マナミ えっと、天に望むではなく、天から臨むなの?
マサシ うん、天に望んでいたら、地から臨むだけさ。
マナミ ……………………!!
CASE 地 の先に 天
サトミ 地から見える、天って、どういうものかな?
メグミ 天とは、地から捕えると、上に表れるものよ。
サトミ 天を望み、地に臨まないと、どうなるのかな?
メグミ 上を見ても、下を見ないから、足を掬われる。
サトミ 天から見える、地って、どういうものかな?
メグミ 地とは、天から捉えると、下に現れるものよ。
サトミ 地に臨み、天を望まないと、どうなるのかな?
メグミ 下を見ても、上を見ないから、頭が重くなる。
サトミ それなら、地ばかり見ても、天ばかり見ても、
完全に、片手落ちだから、片寄ってしまうの?
メグミ うん、天からと地からでは、逆さに見えるの。
だから、片方ばかりだと、偏ってしまうのよ。
サトミ 具体的に、どのように、見たら良いのかな?
メグミ 例えば、地から捕えると、最低に見えても、
それこそ、天から捉えると、最高と認めるの。
サトミ じゃあ、最低と感じても、最高と観じるの?
そんなの、不可能だよ、絶対に出来ないって。
メグミ うふっ、絶対に不能って、見えてしまうとき、
それこそ、絶対に可能って、認めてしまうの。
サトミ ……………………
CASE 地 という 天
サトシ 僕は、何の長所も無いし、生きる意味が無い。
マコト じゃあ、どんな人なら、生きる意味が有るの?
サトシ 具体的に、挙げるならば、アツシ君とかだよ。
財産も多く、才能が豊かで、容姿も良いから。
マコト 財産が少なく、才能が乏しく、容姿が悪いと、
あなたは、生きる価値が無いと、思うわけね?
サトシ 何でも、彼の事になると、皆が飛び付くけど、
逆に、僕の事になると、誰も見向きもしない。
マコト 確かに、地から捕えれば、そう見えるわね。
でも、天から捉えたら、全く逆に見えるのよ。
サトシ じゃあ、天の者が見ると、僕の方を見るの?
マコト 天は、楽を愉しむより、苦を愉しむ生の方が、
殊更に、有り難い生き方、そう見ているのよ。
サトシ えっ、恵まれない方が、認められているの?
マコト そうよ、地で有り難いと、天で当り前になり、
逆に、地で当り前なら、天で有り難くなるわ。
サトシ じゃあ、こんな僕も、生きていて良いのかな?
マコト 他人から、当り前って、認めてもらいたいの?
あなたから、有り難いと、認めるべきでしょ。
サトシ ……………………!!
CASE 天のない地 と 地のない天
サトミ 地と天、どちらの方を、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 天が臨むもの、地って、どういうものかな?
メグミ 地とは、天に立っている、人が臨むものだよ。
サトミ 地が望むもの、天って、どういうものかな?
メグミ 天とは、地に立っている、人が望むものだよ。
サトミ 地を重んじて、天を軽んじると、どうなるの?
メグミ 天のない地なんて、天に目が向かないだけよ。
サトミ じゃ、下に臨んでも、上を望んでないのかな?
メグミ そうよ、目を塞ぐから、地を進めなくなるよ。
サトミ 天を重んじて、地を軽んじると、どうなるの?
メグミ 地のない天なんて、地に足が着かないだけよ。
サトミ じゃ、上を望んでも、下に臨んでないのかな?
メグミ そうよ、足が滑るから、天に勧めなくなるよ。
サトミ 地だけでは、目が開かず、地を上れないし、
天ばかりでは、足が立たず、天に昇れないの?
メグミ そうよ、地と天、その両方が、必要になるの。
サトミ じゃ、地を負いながら、天を追っていくの?
メグミ うふっ、地に臨みながら、天を望んでいくの。
サトミ ……………………!!