第二章 第三話 対話編
CASE 無 の裏に 有
マナミ 見えないもの、無って、どういうものなの?
マサシ 無とは、有ることを、繰り返すことにより、
今は、見られるものが、見えなくなることさ。
マナミ 後から、見えなくなるの、どうしてなのかな?
マサシ いつでも、見られるものは、当り前に感じて、
これまでは、有るものが、無い様に観じるよ。
マナミ 見とめるもの、有って、どういうものなの?
マサシ 有とは、無いことを、折り返すことにより、
今は、見えないものが、見えてくることだよ。
マナミ 後から、見えてくるのは、どうしてなのかな?
マサシ いつでも、見えないものは、有り難く感じて、
これまでは、無いものが、有る様に観じるよ。
マナミ ということは、有ることでも、無いことでも、
自分が、感じたいよう、観じているだけなの?
マサシ うん、当り前に感じれば、見えなくなるし、
反対に、有り難く感じれば、見えてくるのさ。
マナミ じゃ、このように、見えている世界こそが、
本当は、見とめ難い、有り難いものなのかな。
マサシ うん、この世界の、公然の秘密が見えたかい?
マナミ ……………………!!
CASE 無 の先に 有
サトミ 或ることを、繰り返すと、どうなるのかな?
メグミ 意識して、同じことを、繰り返していると、
意識せずに、違うことが、繰り返されるのよ。
サトミ 意識して、Aであると、思い続けていると、
意識せずに、Aでないと、想い込んでいるの?
メグミ 意識して、Aが有ると、思い続けていると、
意識せずに、Aが無いと、想い込んでいるよ。
サトミ 有ることを、繰り返すと、どうなるのかな?
メグミ 意識せず、同じことを、繰り返していると、
無意識から、違うことが、折り返されるのよ。
サトミ 意識せず、Aであると、思い続けていると、
無意識から、Aでないと、想い始めてくるの?
メグミ 意識せず、Aが有ると、思い続けていると、
無意識から、Aが無いと、想い始めてくるよ。
サトミ つまり、有る事に慣れ、無い様に見えるの?
メグミ うん、Aが有るのは、有り難いと思う時だけ、
それが、当り前になると、Aは無くなるのよ。
サトミ なるほど、有り難い教えを、聞いちゃったな。
メグミ うふっ、そう思えているなら、無くならない。
サトミ ……………………!!
CASE 無 と 空 と 有
サトシ 空っぽである、空って、どういうものかな?
アツシ 空とは、無でもあるもの、有でもあるものだ。
サトシ 何も無いもの、無って、どういうものかな?
アツシ 無とは、無ではあるもの、有ではないものだ。
サトシ 何か有るもの、有って、どういうものかな?
アツシ 有とは、無ではないもの、有ではあるものだ。
サトシ 解らない、具体的には、どういうことなの?
アツシ 例えば、何も無い空間を、イメージすると?
サトシ 何も無い、空間が有るって、感じるはずだよ。
アツシ 例えば、限り無い物体を、イメージすると?
サトシ 其の外に、何一つ無いって、感じるはずだよ。
アツシ つまり、無を究めるほど、有に極められて、
その逆に、有を極めるほど、無に究められる。
サトシ そっか、半端に感じると、無と有は異なり、
逆に、極端に観じると、有と無は等しいのか。
アツシ そうだ、その極致をして、空と呼ぶ訳だな。
サトシ なるほど、空を悟ると、有無は要らないのか。
アツシ それは、有無を言わせぬ、極端な観じ方だな。
寧ろ、空を悟るために、色々な有無が必要だ。
サトシ ……………………!!
CASE 有のない無 と 無のない有
サトミ 無と有、どちらの方を、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 見とめてない、無って、どういうものかな?
メグミ 無とは、有り難くなって、認め易いものだよ。
サトミ 見とめている、有って、どういうものかな?
メグミ 有とは、当り前になって、認め難いものだよ。
サトミ 無を重んじて、有を軽んじると、どうなるの?
メグミ 有のない無なんて、単なる有に過ぎないよ。
サトミ じゃ、有り難いほど、見とめ易くなるのかな?
メグミ 意味は、抑え込むほど、意識に浮んでくるよ。
サトミ 有を重んじて、無を軽んじると、どうなるの?
メグミ 無のない有なんて、単なる無に過ぎないよ。
サトミ じゃ、当り前なほど、見とめ難くなるのかな?
メグミ 意味は、有り触れると、意識に沈んでいくよ。
サトミ 無だけは、在り難くなり、有が映るだけで、
有ばかりは、当り前になり、無が写るだけか。
メグミ そうよ、無と有、その両方が、必要になるの。
サトミ じゃ、無を介しながら、有を解していくの?
メグミ うふっ、無を感じながら、有を観じていくの。
サトミ ……………………!!