物語編
第二章 第四話 物語編
第二章 虚 と 実
第四話 有を感じない と 無を感じない
「待て、老子の命に関わる、斯くの如き大役を、
如何して、師の弟子ではない、私に負わせるのか。
自分よりも、相応しい者が、教団の中に居ただろう。」
息子は弟子ではないのかと、笑いながら彼は言った。
『まさか、それを本心で言う、訳ではあるまい。
この教団は、幼子を集めた、老子の学舎に過ぎん。
遥か昔に、父親から巣立った、息子が五万と居よう。』
『幼子は、外に父を望み、父の背を追うばかり、
息子は、内なる父に臨んで、世の型を負うだろう。
ここには、父親の機嫌を伺う、未成年者しかいない。』
『いや、少しも居ないとは、少し言い過ぎたか。
実は、俺は教団の内外を、自由に出入りしていた。
しかし、君が許された、この地までは入れなかった。』
『こんな、暗い通路の先に、老子が居たとはな。
隈なく、潜り込んだつもりが、虚を突かれていた。
祭壇とは、真逆の秘密の闇の道、その先にあるとは。』
『信者は、祭壇の方を向いて、礼拝をしていた。
当然ながら、その善き方に、神が居ると思い込む。
礼拝する、自らに酔う程、神から遠のく仕掛とはな。』