第二章 第五話 対話編
CASE 愚者 の裏に 賢者
マナミ 理を歪める、愚者って、どういうものなの?
マサシ 愚者とは、利に捕われて、理に逆らうものさ。
彼らは、理を解して和さず、利を介して動く。
マナミ 愚者には、利を説くけど、理は解かないの?
マサシ そうさ、理に集らないけど、利に集かるから。
マナミ 利を説き、人を集めていると、どうなるの?
マサシ 愚者が、利を望んで集い、害に臨んで去るよ。
マナミ 理に委ねる、賢者って、どういうものなの?
マサシ 賢者とは、利に囚われず、理に従がうものさ。
彼らは、利を介して動かず、理を解して和す。
マナミ 賢者には、理を解くけど、利は説かないの?
マサシ そうさ、利に集らないけど、理に集まるから。
マナミ 理を解き、人を集めていると、どうなるの?
マサシ 賢者が、義を望んで集い、偽に臨んで去るよ。
マナミ じゃ、人を利で誘うと、熱し易く冷め易く、
反対に、人を理で導くと、熱し難く冷め難い?
マサシ そうだよ、真の利とは、真の理に他ならない。
マナミ もっと、真の利を説かないのは、どうして?
マサシ まあ、真の理を解いても、人が集らないから。
マナミ ……………………
CASE 賢者 という 愚者
サトシ 利を愛する、愚者って、どういうものかな?
アツシ 愚者とは、理に臨まずに、利を望むものだな。
サトシ 理を愛する、賢者って、どういうものかな?
アツシ 賢者とは、利を望まずに、理に臨むものだな。
サトシ じゃあ、愚者と賢者の差は、明瞭なんだね。
アツシ いや、賢者から見るなら、一目瞭然なんだが、
反対に、愚者から見るなら、そうでもないな。
サトシ えっ、分からない、それって、どういうこと?
アツシ 賢者は、理と利の違いが、良く判っているが、
愚か者は、利と理が解らず、利を理に感じる。
サトシ そっか、利を望むために、理を振り翳すのか。
アツシ そうだな、実際の所は、利を騙っているのに、
本人は、理を語っていると考え、始末が悪い。
サトシ なるほど、純粋な愚か者ほど、手に負えない。
彼らは、独り善がりな利を、人に押し付ける。
アツシ ああ、利を理で組み立て、大義として掲げる。
サトシ 大変だ、この絡繰りを、みんなに伝えないと。
これ以上、愚か者に、騙らせてはいけないよ!
アツシ あまり、大義を掲げて、騙らない方が良いぞ。
サトシ ……………………
CASE 賢者なき愚者 と 愚者なき賢者
サトミ 愚者と賢者、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 利を愛する、愚者って、どういうものかな?
メグミ 愚者とは、利に捕われて、理を歪めるものよ。
サトミ 理を愛する、賢者って、どういうものかな?
メグミ 賢者とは、利に囚われず、理に委ねるものよ。
サトミ 愚者を望み、賢者に臨まないと、どうなるの?
メグミ 賢者なき愚者なんて、無理を押し通すだけよ。
サトミ じゃ、利を追う為には、理を捻じ曲げるの?
メグミ そうよ、我が利の為には、他に害を負わせる。
サトミ 賢者を望み、愚者に臨まないと、どうなるの?
メグミ 愚者なき賢者なんて、合理が罷り通るだけよ。
サトミ じゃ、理を追う為には、害を受け容れるの?
メグミ そうよ、公の理の為には、個に害を負わせる。
サトミ 愚者だけでは、利を追って、他に負わせて、
賢者ばかりでは、理に従って、他に順わせる?
メグミ うん、愚者と賢者、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、愚者を負って、賢者を追っていくの?
メグミ うん、愚者を介して、賢者を解していくのよ。
サトミ ……………………!!
CASE 同じて和せず と 和して同ぜず
サトミ ねぇ、利を説いていると、どんな人が集るの?
アツシ それは、利が害に変わると、去っていく人だ。
サトミ 愚か者は、利で来るけど、害で去っていくの?
アツシ 短い間、軽い者を招くなら、利で誘えば良い。
サトミ じゃ、理を解いていると、どんな人が集るの?
アツシ それは、利が害に換っても、去らない人だな。
サトミ 賢い者は、理で来るから、害で去らないの?
アツシ 長い間、重い者を聘くなら、理で導けば良い。
サトミ アツシ君、あのね、あたしと、付き合ってよ。
こんな、美人と付き合えて、得だと思わない?
アツシ おいおい、利で集めると、害で去って行くぞ。
そんな、愚かな関係で、付き合って良いのか?
サトミ えっ、おかしいかな、手っ取り早くて良いよ。
アツシ じゃあ、得なら付き合い、損なら直ぐ別れる。
君は、俺が、そんな人でも、付き合いたいか?
サトミ ううん、もし、そんな人なら、直ぐに別れる。
アツシ そもそも、俺は、理を解いたが、聴いてたか?
サトミ ううん、あたしに、利を説いてくれたでしょ。
もし、理を解くなら、面倒だからもう良いよ。
アツシ ……………………
CASE 経験から学ぶ と 歴史から学ぶ
サトミ ねぇねぇ、愚か者の定義って、何だと思う?
アツシ 愚かな者は、利に捕われて、理を介していく。
すなわち、利を尋ずねて、理を歪めることだ。
サトミ じゃあ、理に委ねなければ、どうなるのかな?
アツシ もちろん、論を辿れないから、人から学べず、
それ故、自ら経験するまで、気づけなくなる。
サトミ ねぇねぇ、賢い者の定義って、何だと想う?
アツシ 賢たる者は、利に囚われず、理を解していく。
すなわち、利を尋ねずに、理に委ねることだ。
サトミ じゃあ、理を歪めなければ、どうなるのかな?
アツシ もちろん、論を遮らないから、他から学べて、
それ故、自ら体験せずとも、気づけてしまう。
サトミ ねぇねぇ、アツシ君から、あたしを見ると、
賢そうかな、愚かそうかな、どっちに見える?
アツシ どうして、そんなことを、俺に尋ねるんだ?
サトミ だって、あたしよりも、賢そうに見えるのは、
アツシ君、あなただけよ、あたしより賢いの。
アツシ そうか、そこまで言うなら、俺から学んで。
歴史上で、それを尋ねる者は、賢くなかった。
サトミ ……………………