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物語編

第二章 第八話 物語編

第二章    難   と   易
第八話 道が狭くなる と 道が広くなる

 

教団の信者は、誰もが上ばかり見ていたため、
底辺に紛れ込んだ、俺の存在には気付かなかった。
しかし、唯一人だけ、俺の真意に気づいた者が居た。

 

出口を見守った老婆に、貴様も会っただろう。
彼女は、俺を一目見て、信者でないと見抜いたが、
だからとて、騒ぎ立てることなく、俺に接していた。

 

いつも、彼女は、信者から相談を受けていた。
何の地位もない、白い服に過ぎない彼女の所まで、
色々な者が訪れて、抱え切れない悩みを打ち明けた。

 

今まで、彼女を下に見て、威張っていた者が、
自分が苦しくなると、彼女の下に縋りに来るのだ。
実に滑稽だったが、逆に老師の真意を知りたくなる。

 

こんな仕掛を創った、老子は何者だと聞くと、
こんな仕組に気づく、君は何者だと彼女は答えた。
互いに噴き出して、以来、彼女と話すようになった。

 

あんたを覚ますのは、私でも老子でもないと、
彼女は、俺の顔を覗き込んでは、良く言っていた。
教団から、俺に潜り込んだものは、その二人だけだ。

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