第二章 第八話 対話編
CASE 難 の裏に 易
マナミ 道が多いこと、易って、どういうものなの?
マサシ 易とは、虚が寡くなって、実を選び易いのさ。
マナミ じゃ、易きを選んでいると、どうなるのかな?
マサシ 初めは、選び易いけれど、後で択び難くなる。
マナミ 道が寡いこと、難って、どういうものなの?
マサシ 難とは、虚が多くなって、実を択び難いのさ。
マナミ じゃ、難きを択んでいると、どうなるのかな?
マサシ 初めは、択び難いけれど、後で選び易くなる。
マナミ 即ち、易きを選び続けると、択び難くなり、
反対に、難きを択び続けると、選び易くなる?
マサシ そうだよ、選び続けるほど、択び易くなるし、
反対に、択び続けないと、選び難くなるのさ。
マナミ どうやら、慣れというものが、あるみたいね。
どうしても、過去の選択に、縛られてしまう。
マサシ そうだよ、熟れているものを、実と観じて、
反対に、慣れてないものを、虚と感じるから。
マナミ 毎回、初めての気持ちで、選べば良いわけね。
でもね、初心に還るのって、難しくないかな?
マサシ うん、でもね、それさえ、慣れじゃないかな。
マナミ ……………………!!
CASE 難 の先に 易
サトミ 険しくなること、難って、どういうものかな?
メグミ 難とは、思いのままに、出来ていないことよ。
サトミ どうして、想いのままに、出来なくなるの?
メグミ それは、我に依ることなく、他に頼るからよ。
サトミ どうして、他に頼るほど、難しくなるのかな?
メグミ 我と違って、他の物は、我がままに出来ない。
サトミ 優しくなること、易って、どういうものかな?
メグミ 易とは、思いのままに、出来ていることなの。
サトミ どうして、想いのままに、出来ているのかな?
メグミ それは、他に頼ることなく、我に依るからよ。
サトミ どうして、我に依るほど、易しくなるのかな?
メグミ 他と違って、我が者は、我がままに出来るよ。
サトミ 安易に、他に頼っていると、難しくなって、
困難でも、我に依っていると、易しくなるの?
メグミ うん、他に頼ることなく、我に依っていれば、
たとえ、初めは難しくても、後で易しくなる。
サトミ じゃ、我がままにすると、思う様にならず、
反対に、我がまましないと、想う様になるの?
メグミ 思いの外、想いのままは、我が儘にならない。
サトミ ……………………!!
CASE 敵を知る と 己を知る
アツシ 敵を知り、己を知れば、百戦、危うからずだ。
サトシ じゃあ、敵を知るために、どうすれば良いの?
アツシ なるべく、敵を攻めず、思いのままにさせる。
サトシ 反対に、相手を責めたら、どうなるのかな?
アツシ 自ずから、守るようになり、隠してしまうな。
サトシ じゃあ、己を知るために、どうすれば良いの?
アツシ なるべく、己を守らず、在りのままでいる。
サトシ 反対に、自分を護ったら、どうなるのかな?
アツシ 自ずから、装うようになり、匿してしまうな。
サトシ う~ん、敵を攻めず、己を守らなかったら、
敵に、責められるまま、負けちゃうだけだよ。
アツシ だから、器が認める限り、そうすれば良い。
その結果、敵も知って、己も知ることになる。
サトシ いや、だから、負けたら、意味ないじゃない。
敵を攻めて、己を守る方が、勝てるはずだよ。
アツシ いや、だから、器が許す限り、そうするんだ。
サトシ だから、そして、負けたら、意味がないよね。
アツシ いや、待てよ、どうやら、君には早過ぎたか。
そうだ、君の言う通り、遣り過ぎは良くない。
サトシ ……………………
CASE 易のない難 と 難のない易
サトミ 難と易、どちらの方を、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 虚が多いこと、難って、どういうものかな?
メグミ 難とは、実が少ないほど、慣れ難いことだよ。
サトミ 実が多いこと、易って、どういうものかな?
メグミ 易とは、虚が少ないほど、慣れ易いことだよ。
サトミ 難を重んじて、易を軽んじると、どうなるの?
メグミ 易のない難なんて、単なる虚勢に過ぎないよ。
サトミ じゃ、難しいことを、熟しているだけなの?
メグミ そうよ、虚を熟しても、実に慣れないままよ。
サトミ 易を重んじて、難を軽んじると、どうなるの?
メグミ 難のない易なんて、単なる慣性に過ぎないよ。
サトミ じゃ、易しいことに、慣れているだけなの?
メグミ そうよ、実に慣れても、虚を熟せないままよ。
サトミ 難だけでは、熟れようと、慣れないままで、
易ばかりでは、慣れようと、熟れないままね?
メグミ そうよ、難と易、その両方が、必要になるの。
サトミ じゃ、易を介しながら、難を解していくの?
メグミ そうよ、易を感じながら、難を観じていくの。
サトミ ……………………!!