物語編
第二章 第九話 物語編
第二章 礼 と 義
第九話 型に心が伴う と 心に型が伴う
『末端の信者として、俺が侵入を繰り返す間に、
何度か老子が姿を現し、祭壇の前で教えを説いた。
その様を最後列から、俺は見ていたが、実に嘘臭い。』
『決して、嘘ではない、正しい法を説いている。
しかし、情熱は込めても、本心から解いていない。
即ち、説いている法が、何でも構わない様に見えた。』
『実際、俺が確めた間にも、法が真逆になった。
空である、俺から見れば、全く構わないことだが、
無智である、者から見れば、狂気の沙汰だったろう。』
『老子を、絶対と思う者ほど、これに目を瞑る。
悟りを求め、師を信じる者ほど、偽りに覆われる。
すなわち、智恵に囚われると、無智に捕われる仕掛。』
『こんな仕掛で惑わす、老子は偽物だと言うと、
こんな仕組で悟った、君は本物だと彼女は応えた。
偽物ではない、本物の老子は何処か、彼女に尋ねた。』
『つまり、外に見せている、悪の仮面ではなく、
その逆、内だけに魅せている、善の演技でもなく、
この世に、老子が生まれた、真の目的を探し求めた。』