物語編
第二章 第十話 物語編
第二章 権利 と 義務
第十話 公利を授かる と 私利を授ける
『彼女は、素の老子に、会ったことならあるが、
老子の、真の使命は、自分にも解らないと答えた。
更に、天命を継ぐ者は、ここに集った誰でもないと。』
『聖師は、或る生には、仏の教えを説き明かし、
生まれ変り、別の生には、神の教えを解き明かす。
今生の老師は、絶対を説いたが、一面でしかないと。』
『無智な弟子は、或る教えには、付き従えても、
生まれ変わり、別の教えになると、付き随えない。
その一方で、縁だけは残るから、師の近くに生れる。』
『素の聖師は、彼女だけに、こう呟いたそうだ。
今こうして、扉の外で、怒声を上げているものは、
前世において、私に対し、歓声を上げていたものだ。』
『一瞬にして、この俺が、弟子に組み込まれた。
その器の大きさたるや、並みの者は打ち砕けまい。
斯くの如き破格の存在は、人類のみか万物の脅威だ。』
『貴様には、この一言の重み、解かっているか。
これを聞いて、俺の中の仮説が、確信に変わった。
この老人は、ただの狂人ではない、異常の異常だと。』