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物語編

第二章 第十話 対話編

CASE 権利 の裏に 義務

 

マナミ 権義の前の字、権って、どういうものなの?
マサシ 権利とは、公の理を使い、私の利を守るのさ。
マナミ 公理に臨み、私利を望むって、どういうこと?
マサシ 得てして、私利を追うとき、不合理と化す。
    だから、自ら公理を負い、公理に追われない。
マナミ 自分から、不合理を逃がれたら、どうなるの?
マサシ その途端に、権が廃れていき、剣に堕ちるよ。
マナミ 権とは、自らが通すもので、剣で徹さないの?
マサシ うん、凶暴な権利なんて、越権に過ぎないよ。
マナミ 権義の後の字、義って、どういうものなの?
マサシ 義務とは、私の利を遣い、公の理を護るのさ。
マナミ 私利を望み、公理に臨むって、どういうこと?
マサシ 得てして、公理を負うとき、不利益と化す。
    だから、自ら不利を追い、他人に負わせない。
マナミ 他人にも、不利益を負わせたら、どうなるの?
マサシ その瞬間に、義が廃れていき、偽に落ちるよ。
マナミ 義とは、自ずと透すもので、他に徹さないの?
マサシ うん、横暴な義務なんて、不義に過ぎないよ。
    まさに、本来の権義は、自ずと伝わるものさ。
マナミ ……………………!!

 


 

CASE 権利 の先に 義務

 

サトミ 個の利を望む、権利って、どういうものかな?
メグミ 権利は、公の理を負い、個の利を追うことよ。
サトミ じゃ、個の利を望むなら、公の理に臨むべき?
メグミ そうよ、誰か利を得るとき、誰かが害を得る。
    この、公の理に臨まず、個の利は望めないよ。
サトミ 公から、権利を得るため、義務を果たすの?
メグミ うん、公に受けた利は、公に返して行くのよ。
サトミ 公の理に臨む、義務って、どういうものかな?
メグミ 義務は、個の利を追い、公の理を負うことよ。
サトミ じゃ、公の理に臨むなら、個の利を望むべき?
メグミ そうよ、自ら害を得るとき、自らが利を得る。
    この、個の利を望まず、公の理に臨めないよ。
サトミ 自から、義務を果すため、権利を授かるの?
メグミ うん、個が捧げた利は、個に還って来るのよ。
サトミ つまり、公の理を通して、個の利は巡るの?
メグミ 自ら、理に委ねるなら、利が滞らなくなり、
    自らが、理を歪めるなら、利が届かなくなる。
サトミ なるほど、良く解かったの、良い話だったよ。
メグミ うふっ、利と感じるのは、理が通じる証だよ。
サトミ ……………………!!

 


 

CASE 権利 という 義務

 

サトシ 人は、生まれながらに、権利を持っている!
マサシ 権利を、与えているのは、天ではなく社会さ。
サトシ 違うって、社会なんて、権利を奪うだけだよ。
マサシ 権利は、義務を果す者に、社会が与える物さ。
    即ち、義務なき権利も、権利なき義務もない。
サトシ じゃあ、義務なき権利は、何処にも無いの?
マサシ 君は、天に訴え掛けて、適えてくれると思う?
    実際に、叶えているのは、天ではなく人だよ。
サトシ それなら、権利なき義務も、何処にも無いの?
マサシ そうさ、権利なき義務を、負う必要はないよ。
    必ず、個の権利を望み、公の義務に臨むのさ。
サトシ つまり、社会に属すから、権と義が生じて、
    逆に、社会を去るなら、義も権も招じないの?
マサシ そうさ、社会で暮すなら、義務を果すべきさ。
    社会から、知らないうちに、恩恵を得ている。
サトシ じゃあ、義務だけ授けて、権利を与えない。
    そういう、社会ならば、覆しても良いわけだ。
マサシ そうさ、権利だけ追って、義務を負わない。
    そういう、自然の権利より、自然に見えるよ。
サトシ ……………………!!

 


 

CASE 義務 という 権利

 

サトシ 僕にも、幸福に生きる、権利が有る筈だよ。
アツシ いや、そんな権利なんて、絶対に在り得ない。
    むしろ、それを訴える限り、幸福に為れない。
サトシ 冷たいな、そんな酷いことを、人に言うかな。
    僕にだって、生まれながら、権利が有るんだ!
アツシ いやいや、先天の権利なんて、幻に過ぎない。
    権利を、無人島で訴えたら、どうなると思う?
サトシ 叫んでも、誰も聞いてないし、疲れるだけか。
アツシ そうだ、だから、明らめて、認めるしかない。
    即ち、社会が無かったら、権利も義務も無い。
サトシ う~ん、そう考えると、認めるしかないかな。
アツシ ああ、そう認めると、社会の有り難さが解る。
    そして、そう思えると、自ずと世に尽くせる。
サトシ じゃ、先天の権利が、有ると思い込むから、
    世界が、歪んで見えて、甘えた考え方になる。
アツシ ああ、君もようやく、出発地点に立てたな。
    今後は、本当の意味で、幸福に成れるだろう。
サトシ うん、君に教えて貰って、本当に良かったよ。
アツシ ほらな、人の世の中は、有り難いものなんだ。
サトシ ……………………!!

 


 

CASE 義務なき権利 と 権利なき義務

 

サトミ 権利と義務、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 社会に望む、権利って、どういうものかな?
メグミ 権利とは、個の利を守り、私利を望むことよ。
サトミ 社会に臨む、義務って、どういうものかな?
メグミ 義務とは、公の理を護り、公理に臨むことよ。
サトミ 権利を望み、義務に臨まないと、どうなるの?
メグミ 義務なき権利なんて、唯の越権に過ぎないよ。
サトミ じゃ、私利を望んでも、公理に臨まないの?
メグミ いずれ、暴利が生まれて、弊害が埋まれるよ。
サトミ 義務を望み、権利に臨まないと、どうなるの?
メグミ 権利なき義務なんて、只の棄権に過ぎないよ。
サトミ じゃ、公理に臨んでも、私利を望まないの?
メグミ いずれ、無理が産まれて、合理が埋まれるよ。
サトミ 権利だけでは、利が滞って、利が巡らない。
    義務ばかりでは、理が歪んで、理が直らない。
メグミ うん、権利と義務、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、義務を負って、権利を追っていくの?
メグミ うん、義務に臨んで、権利を望んでいくのよ。
サトミ ……………………!!

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