第二章 第十一話 対話編
CASE 獣性 の裏に 人性
マナミ 獣たること、獣性って、どういうものなの?
マサシ 獣性とは、欲を抑さえず、法に逆らうことさ。
マナミ 獣って、法を破る方が良い、そう思うのかな?
マサシ 守ると損、破ると得って、そう想っているよ。
マナミ 獣たる者は、法を破る損が、見えてないの?
マサシ 理に叛くから、真の利が、捕えられないのさ。
マナミ 人たること、人性って、どういうものなの?
マサシ 人性とは、欲を圧さえて、法に従がうことさ。
マナミ 人って、法を守る方が良い、そう思うのかな?
マサシ 破ると損、守ると得って、そう想っているよ。
マナミ 人たる者は、法を守る得が、見えているの?
マサシ 理に順うから、真の利が、捉らえられるのさ。
マナミ つまり、獣にせよ、人にせよ、欲を持つけど、
獣の方が、視野が狭いから、使い熟せないの?
マサシ 本当は、良くないことを、良く思ってしまう。
マナミ どうして、悪くなることが、判らないのかな?
マサシ それは、良くを望み過ぎると、そうなるのさ。
マナミ ちゃんと、教えてあげれば、解ると思うけど。
マサシ まさに、教えているけど、君は分かっている?
マナミ ……………………
CASE 獣性 の先に 人性
サトミ 獣が生きる、獣の世って、どういうものかな?
メグミ 獣の世は、欲に溺れて、利に従う世のことよ。
サトミ 利を捕えて、法を破ると、どうなっていくの?
メグミ 利を奪い合い、害が増える、世の中になるよ。
サトミ 法を破ると、欲と欲が剋して、害が増えるの?
メグミ 良くと良くが、刻し合って、悪く変わるのよ。
サトミ 人が生きる、人の世って、どういうものかな?
メグミ 人の世は、欲を抑えて、理に順う世のことよ。
サトミ 理を捉えて、法を守ると、どうなっていくの?
メグミ 利を与え合い、害が減じる、世の中になるよ。
サトミ 法を守ると、欲と欲が刻さず、害が殖えない?
メグミ 良くと良くが、和し合って、悪く換らないよ。
サトミ それならね、法を守った方が、良いじゃない。
どうして、世の中の人って、法を守らないの?
メグミ それは、他に法を護らせ、自らは法を破る。
それこそ、一番の得と、誰もが考えるからよ。
サトミ そっか、その手が有った、それが最も得だね。
表で、守る振りをして、裏で破るのが良いね。
メグミ うふっ、これだから、法が厳しくなるのよ。
サトミ ……………………
CASE 人性 という 獣性
サトシ 絶対に、法を破ったら、厳しく罰しないと。
アツシ どうやら、法を破る者を、激しく嫌うんだな。
サトシ 当然さ、人という者は、法は守るべきなんだ。
自分だけ、免れるなんて、狡い獣じゃないか。
アツシ すると、法を守るのは、損と考えているのか?
サトシ 当然だよ、法は誰だって、守りたくないよ。
法を破れば、罰が有るから、護っているんだ。
アツシ とすると、罰を受けたら、法を守るより損。
だから、守りたくはないが、護っているのか。
サトシ 当然だよ、罰が無ければ、誰も守らないよ。
アツシ すると、君が嫌ってしまう、獣と変わらない。
君の方が、人の皮を被ぶった、獣に過ぎない。
サトシ おかしいよ、守ると破るは、真逆じゃないか。
アツシ 人という者は、罰が有ろうが、無かろうが、
法を守ることを、得に見るだけ、知性が高い。
サトシ すると、君は、法を守るのが、得に見えない、
この僕が、知性の低い獣と、言いたい訳かな?
アツシ そうか、そこまで解かる、知性が有るのなら、
俺が説く、法を破らないで、解いて欲しいが。
サトシ ……………………
CASE 弱 肉 強 食
サトシ 獣が暮らす、獣の世は、どういうものかな?
メグミ 獣の世は、利を追う性で、法を破る世なのよ。
サトシ 人が暮らす、人の世は、どういうものかな?
メグミ 人の世は、理を負う性で、法を守る世なのよ。
サトシ じゃあ、ここでの理は、どういうものかな?
メグミ 必ず、利が生まれるとき、害が産まれている。
これを、獣なら曖昧に、人は明確に認めるの。
サトシ それなら、獣の場合って、どうなるのかな?
メグミ 獣なら、他に害を与え、自らが利を得るのよ。
サトシ それなら、人の場合って、どうなるのかな?
メグミ 人なら、自ら害を負い、自らで利を追うのよ。
サトシ 獣も、中途ながらに、理を認めているけど、
自分は、例外なんだと、利で歪めているのか。
メグミ 必ず、利を追っていると、害も負ってしまう。
これを、獣なら半端に、人は完全に認めるの。
サトシ それゆえ、獣に近いほど、弱肉強食なんだね。
自分だけは、勝ち組になり、例外を望むんだ。
メグミ 原理的に、利だけ得るなんて、出来ないのに、
自分だけは、出来ると思うのよ、彼方もかな?
サトシ ……………………!!
CASE 人性なき獣性 と 獣性なき人性
サトミ 獣性と人性、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 獣たるもの、獣性って、どういうものかな?
メグミ 獣性とは、利に捕われて、理を外れるものよ。
サトミ 人たるもの、人性って、どういうものかな?
メグミ 人性とは、利に囚われず、理を辿れるものよ。
サトミ 獣性を望み、人性に臨まないと、どうなるの?
メグミ 人性なき獣性なんて、無法の世に過ぎないよ。
サトミ じゃ、放って置いたら、法を破る人だけなの?
メグミ そうよ、そんな世の中に、法は説けなくなる。
サトミ 人性を望み、獣性に臨まないと、どうなるの?
メグミ 獣性なき人性なんて、超法の世に過ぎないよ。
サトミ じゃ、放って置いても、法を守る人だけなの?
メグミ そうよ、そんな世の中に、法は届かなくなる。
サトミ 獣性だけは、法を説いても、法が入らない。
人性ばかりは、法が解かれて、法が要らない。
メグミ うん、獣性と人性、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、獣性に臨み、人性を望んでいくの?
メグミ そうなの、獣性を負い、人性を追っていくの。
サトミ ……………………!!