第二章 第十二話 対話編
CASE 天法 の裏に 人法
マナミ 天が創った、天法って、どういうものなの?
マサシ 天法とは、例外を許さぬ、先天的な理なのさ。
マナミ 元から在る、天の理は、どういうものなの?
マサシ 自然に依って、報いると、酬いられることさ。
作為を撤し、無為に徹する、天の仕組なのさ。
マナミ 天の法は、本当の本当に、例外が無いのかな?
マサシ 無いよ、でも、信じられず、人は法を作るよ。
マナミ 人が作った、人法って、どういうものなの?
マサシ 人法とは、例外を認める、後天的な理なのさ。
マナミ 後から有る、人の理は、どういうものなの?
マサシ 人為に拠って、報いると、酬いられることさ。
無為を撤し、作為に徹する、人の仕業なのさ。
マナミ 人の法は、本当の本当に、例外が有るのかな?
マサシ 有るよ、人が作る法は、漏れが生じるから、
その穴を、埋めるために、法を作り続けるよ。
マナミ つまり、天の法を疑い、法を作った時から、
人は、漏れを塞ぐために、法を作り続けるの?
マサシ そうさ、法を作るから、法に縛られてしまう。
それこそ、繰り返す、人の法、即ち、業だよ。
マナミ ……………………!!
CASE 天法 の先に 人法
サトミ どういう、法律が、良い法律と言えるのかな?
メグミ 誰でも、報いるなら、漏れなく、酬いられる。
そういう、法律ならば、良い法律と言えるね。
サトミ う~ん、どういう理由で、そう言えるのかな?
メグミ そもそも、この世界は、その様に出来ている。
つまり、それを認めたら、法律は要らないの。
サトミ 必ず、他に為すことが、自らに返るならば、
確かに、悪いことなんて、誰もしなくなるね。
メグミ うん、誰でも自ずから、善いことをするよね。
サトミ でもな、漏れが無いって、信じられないよ。
それゆえ、悪い事を考える、人が現れるのよ。
メグミ そんな、悪人が居るから、人の法を作るのよ。
でも、なるべく作らず、自然のままが良いの。
サトミ だから、例外が無い方が、良い法律なわけね。
メグミ うん、例外が有るのは、作為が有る証拠なの。
不自然な、法律ほど、人の都合で直ぐ変るよ。
サトミ つまり、作為を撤して、無為に徹するほど、
良い法だなんて、ほんと、皮肉なものだよね。
メグミ うん、それも、報いたから、酬いられただけ。
サトミ ……………………!!
CASE 天網恢恢 疎にして漏らさず
サトシ 僕が、残しておいた、おやつ、食べただろう。
サトミ ううん、知らない、あたし、食べてないもん。
サトシ もう、人との約束は、破れることは有っても、
絶対に、天との契約は、敗れることは無いよ。
サトミ どうして、人の法は、漏れることが有るの?
サトシ 人の法とは、自我が引いた、境界線だからさ。
サトミ どうして、天の法は、漏れることが無いの?
サトシ 天の法とは、自然に現れる、地平線だからさ。
サトミ 境界線は、引いた所に行けば、破れるけど、
地平線だと、どこまで行っても、敗れないの?
サトシ 着けないから、有るか無いかさえ、解らない。
だからこそ、摺り抜けることが、出来ないよ。
サトミ はっきり、有ると分れば、逆に破られるし、
反対に、在ると解らないと、寧ろ敗られない。
サトシ うん、自然の力をして、思い知らされる前に、
自身で、自我の知をして、認める方が良いよ。
サトミ 破れると、思える内に、敗れないと認める。
そんな法が、天の教えに、適っている訳なの?
サトシ 地平線に、逃げたって、果てしなく疲れるよ。
サトミ ……………………
CASE 人法なき天法 と 天法なき人法
サトミ 天法と人法、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 例外が無い、天法って、どういうものかな?
メグミ 天法とは、天の力で、報いに酬いることだよ。
サトミ 例外が有る、人法って、どういうものかな?
メグミ 人法とは、人の力で、報いに酬いることだよ。
サトミ 天法を望み、人法に臨まないと、どうなるの?
メグミ 人法なき天法なんて、唯の無法に過ぎないよ。
サトミ じゃ、人の法が無いと、悪い人が暴れるの?
メグミ そうよ、人の欲が強いる、界が現われるのよ。
サトミ 人法を望み、天法に臨まないと、どうなるの?
メグミ 天法なき人法なんて、只の悪法に過ぎないよ。
サトミ じゃ、天の法が無いと、悪い法が暴れるの?
メグミ そうよ、人の欲が布いた、戒に縛られるのよ。
サトミ 天法だけでは、隠れ続けて、荒れ続けるし、
人法ばかりでは、漏れ続けて、布き続けるの?
メグミ うん、天法と人法、その両方が、必要なのよ。
サトミ そっか、人法を究め、天法を極めていくの?
メグミ そうなの、人法を超え、天法を越えていくの。
サトミ ……………………!!