物語編
第二章 第十三話 物語編
第二章 法 と 業
第十三話 自然に委ねる と 自我に任せる
彼は、ここまで、一息に胸の内を曝らけ出すと、
逃げないと見たか、私が本心を言い易いようにか、
身体を拘束する、兵士に言い付けて、私を解放した。
『この者達は、我が精鋭であり、愛する麾下だ。
信頼出来る、だから、彼らの前で話して構わない。
それとも、人払いが必要か、それなら、そうするが。』
返答を躊躇う、最たる原因は、自らの内にあり、
自分次第で、老子の生死が、決定する恐怖だった。
その重圧から、免れたい余り、逃げ口上が毀れ出す。
「いや、法の存亡に関わる、斯くの如き大役を、
如何して、最後に立ち寄った、私に負わせるのか。
教団の幹部、青き者の方が、責が有るだけ相応しい。」
二度目は美しくないぞと、苦笑しながら彼は言った。
『醜く繰り返せば、美しい法も業に腐り果てる。
これは応えてやるが、これで最後だから覚悟しろ。
確かに、青き者は、老師の真の目的に気づき始めた。』
『しかし、一厘の仕組みには、遥かに及ばない。
奴の悲しき眼差しが、自らに向いている間は未熟。
他の者に向けられない限り、老師の下を巣立てまい。』