物語編
第二章 第十五話 物語編
第二章 性悪 と 性善
第十五話 独善に働く性 と 至善に動く性
「なるほど、そこまで、考えが至るのであれば、
如何して、その先にまで、考えが及ばないものか。
故意に、不完全を装い、演じている様にさえ見える。」
「汝が、扉の内の世の型を、私に見ているよう、
私は、扉の外の世間の縮図を、汝に見とめている。
巷間の中心は、汝の主君に非ず、汝に他ならないと。」
「汝は、我が君、我が君と、繰り返しているが、
汝は、その実、我が君を、何ら必要としていまい。
余りある才を隠すため、隠蓑として祀り上げている。」
「人の素顔を望むなら、先ず、自ら仮面を外せ。
世の本質に臨みたいなら、先ず、自ら本心を語れ。
自らを安全な場所において、物陰から真理を望むな。」
「汝が、本心から、民を守りたいのは疑わない。
汝が、衷心から、法を護っているのも嘘ではない。
しかし、何処かに、心を遊ばせる余裕が残っている。」
「汝は、その余りある才を、持て余していよう。
汝の悲しき眼差しが、自らに向いている間は未熟。
他の者に向けられない限り、主君の下を巣立てまい。」