clear
clear
物語編

第二章 第十五話 対話編

CASE 性善 の裏に 性悪

 

マナミ 善い性のこと、性善って、どういうものなの?
マサシ 性善とは、欲を持って、至善に動く性なのさ。
マナミ 善に至ること、至善って、どういうものなの?
マサシ 至善は、我にも善く、他にも善い、善なのさ。
マナミ 皆に善い、至善に動いていると、どうなるの?
マサシ 全体にまで、利が巡るから、自然になるのさ。
マナミ 悪い性のこと、性悪って、どういうものなの?
マサシ 性悪とは、欲を以って、独善を働く性なのさ。
マナミ 独り善いこと、独善って、どういうものなの?
マサシ 独善は、我にも善く、他には悪い、善なのさ。
マナミ 皆に悪い、独善を働いていると、どうなるの?
マサシ 部分にだけ、利が滞るから、不自然になるよ。
マナミ すなわち、自分という、部分に囚われるから、
    自然が、歪んでいき、不自然に移っていくの?
マサシ そうだよ、自我が、欲を持った、その時から、
    自我に、捕らわれて、不自然に映ってしまう。
マナミ 初めから、自我なんて、無ければ良かったの。
マサシ そんな、不自然な見方も、許されているのさ。
    何故なら、自我だって、自然の一部だからね。
マナミ ……………………!!

 


 

CASE 性善 の先に 性悪

 

サトミ 快楽の為の、殺人なんて、信じられないわ。
    根本的に、人とは違う、悪魔に決まっている。
マナミ たとえ、傍から見て、悪いことをしていても、
    逆に、本人から見れば、善いことをしている。
サトミ 殺人は、何処から見ても、悪いことでしょ!
    当り前が、分からない、あんたが悪人なのよ。
マナミ 悪人は、我に善くて、他に悪い人のことなの。
    誰だって、自ら見れば、善い人に見えている。
サトミ つまり、内から捕えると、自分は善であり、
    逆に、外から捉らえないと、善悪は解らない?
マナミ たとえ、善に見えようと、独り善がりなら悪。
    即ち、独り善がりの善こそ、悪そのものなの。
サトミ こんな、絶対善を捕まえ、悪と言いたいのね。
    あんたは、あたしを捉まえ、悪人扱いするの?
マナミ 自らの善を、信じて疑わない、それが悪なの。
    他の善が、見えなくなると、独善に嵌まるの。
サトミ もうっ、あんたのような悪人、絶対に死刑よ。
マナミ そうして、悪を根絶やすと、気分が良いけど、
    それは、快楽の為の殺人、そのものじゃない?
サトミ ……………………

 


 

CASE 性善 という 性悪

 

サトシ 人の本性は、善なのか、それとも、悪なのか?
マサシ 人の本性とは、良く、すなわち、欲なのさ。
    欲を抱える者は、善くもなり、悪くもなるよ。
サトシ 皆のために、良くを望むと、どうなるのかな?
マサシ 我にも善くて、他にも善いと、至善に動くよ。
    性善の人が造る、至善の世界は、自然体だね。
サトシ 我がために、良くを望むと、どうなるのかな?
マサシ 我には善くて、他には悪いと、独善を働くよ。
    性悪の人が作る、独善の世界は、不自然だね。
サトシ すると、至善の方が、絶対に善い筈だよね。
    どうして、独善の法を、選んでしまうのかな?
マサシ たとえ、悪人でも、自分は善と思っている。
    ただ、視野が狭くて、独り善がりになるのさ。
サトシ じゃあ、視野を広げる、教育を施すべきだよ。
マサシ でも、逃げる悪の教育は、存外に難しいのさ。
サトシ ううん、無理を強いてでも、悪は律しないと。
マサシ 嫌がる悪を、強いて善にする、これは善かな?
サトシ 勿論だよ、これ以上の善は、どこにも無いよ。
マサシ ほらね、それこそ独善さ、意外に択べるのさ。
サトシ ……………………

 


 

CASE 性悪 という 性善

 

サトシ 悪い人の性、性悪って、どういうものなの?
アツシ 性悪とは、我に善い、独善を突き詰める性だ。
サトシ 善い人の性、性善って、どういうものなの?
アツシ 性善とは、皆に善い、至善を突き詰める性だ。
サトシ う~ん、皆の中に、当然、我が在る筈だよね。
アツシ ああ、大は小を兼ね、当然、皆は我を含む。
サトシ じゃあ、どうして、至善に変わらないのかな?
    最終的に、すべては、性善に至るはずだよね。
アツシ まだ、途中に過ぎない、自ずと為るはずだが。
サトシ ううん、誤魔化さないで、突き詰めて考えて。
    原理的に、自然に変らない、理由が在る筈だ。
アツシ じゃあ、善だけの世界は、どうなると思う?
サトシ もし、善だけだったら、善が一つしかないね。
    そして、善が一つならば、独り善がりになる?
アツシ ああ、至善を突き詰めると、独善に陥るんだ。
サトシ うわっ、恐ろしい結論に、辿り着いちゃった。
    そもそも、突き詰めたのが、悪かったのかな。
アツシ それは違う、それこそ却って、独り善がりだ。
    独善に堕ちる、その過ちも、自然に含まれる。
サトシ ……………………!!

 


 

CASE 性悪なき性善 と 性善なき性悪

 

サトミ 性善と性悪、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 飽き難い性、性善って、どういうものかな?
メグミ 性善とは、至善に動いて、善くなる性なのよ。
サトミ 厭き易い性、性悪って、どういうものかな?
メグミ 性悪とは、独善を働いて、悪くなる性なのよ。
サトミ 性善を望み、性悪に臨まないと、どうなるの?
メグミ 性悪なき性善なんて、唯の独善に過ぎないよ。
サトミ じゃ、性悪を絞めたら、至善に成らないの?
メグミ そうよ、性善で占めたら、独善と変らないよ。
サトミ 性悪を望み、性善に臨まないと、どうなるの?
メグミ 性善なき性悪なんて、只の独悪に過ぎないよ。
サトミ じゃ、性善を排したら、独善に為らないの?
メグミ そうよ、性悪を拝したら、自然と悪くなるよ。
サトミ 性善だけでは、悪を憎んで、自ら悪となり、
    性悪ばかりでは、善を悪んで、自ら悪くなる?
メグミ うん、性善と性悪、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、性悪を究め、性善を極めていくの?
メグミ そうなの、性悪を超え、性善を越えていくの。
サトミ ……………………!!

コメントを残す

入力エリアすべてが必須項目です。メールアドレスが公開されることはありません。