物語編
第二章 第十九話 物語編
第二章 文化 と 武化
第十九話 欲が分かれる と 欲が合わさる
「善き法も、悪しき法も、悉く受け容れてこそ、
人の法は、天の法に変わり、天の徳を譲り受ける。
悪法もまた法なり、汝は、法の本質が見えているか。」
「治世のため、法を持って、悪を切り捨てれば、
いずれ、切り捨てられた悪は、世を乱そうとする。
すなわち、悪を受け容れないと、乱世が早く訪れる。」
「治世のとき、徳を以って、悪を受け容れれば、
いずれ、生まれ変わった悪は、世を保とうとする。
すなわち、悪を切り捨てないと、治世が長く留まる。」
「切り捨てれば、後から、受け容れさせられる。
先ず法で治め、後に徳で治める、世の骨子であり、
法に捕らわれて、愛が冷えるのは、愚の骨頂である。」
「公平に厳しい法は、普遍的に美しい理である。
一方、その美しさとは、醜さを憎む冷たい美しさ。
その美に酔い痴れる限り、凍る刃で自らを傷つける。」
「汝は、人の法の支配に、頼り過ぎるようだが、
天の法を、真似たに過ぎぬ、不完全なものと知り、
天の寛容を、真似たが故えの、不届きなものと知れ。」
「世を法で治める先には、徳で治める段があり、
世を徳で治める先には、世が道で治まる階がある。
法家に過ぎない汝に、道化は裁けても道家は裁けぬ。」