物語編
第二章 第二一話 物語編
第二章 相生 と 相克
第二一話 隣り合う関係 と 向い合う関係
『諫言、耳が痛い、君の言は、いちいち尤もだ。
非がないほど賢くなく、認めないほど愚かでない、
我が軍師として仕えぬか、王たる者に育ててやるぞ。』
「いいだろう、しかし、それには、条件がある。
老子を解放せよ、太上老君なき、天下に治教なし。
乱世を再び、治世に戻すには、君子の智徳が必要だ。」
『いや、それは、到底、出来ない約束だったな。』
「何だと、今し方、我が道理を解したではないか。」
『だからだ、それで、出来なくなったのではないか。』
『確かに、君の論で、彼が白眉なのは分かった。
しかし、君の理で、彼を処刑しなければならない。
私も、泣く泣く、彼を斬るしかなくなってしまった。』
「どういうことだ、師の才を認めたのではないのか。」
『いや、法治の先に徳治、それを思えばこそだ。
すなわち、悪法も又法なり、とは、君の言だった。
君の言に従うなら、彼を、悪法で裁かねばならない。』
「馬鹿な、これは特例だ、君子を損ねてはならない。」
『いや、人法の先に天法、それに学べばこそだ。
天網恢恢疎にして漏らさず、とは、君の言だった。
君の言に随うなら、彼を、特別に許せるはずがない。』