第二章 第二一話 対話編
CASE 相生 の裏に 相克
マナミ 合い生じる、相生って、どういうものなの?
マサシ 相生とは、陰と陽が、補完する関係のことさ。
マナミ 合い克する、相克って、どういうものなの?
マサシ 相克とは、陽と陰が、矛盾する関係のことさ。
マナミ ずっと、補完の関係は、相生の関係のまま?
マサシ そのうち、相生の関係は、相克の関係になる。
マナミ ずっと、矛盾の関係は、相克の関係のまま?
マサシ そのうち、相克の関係は、相生の関係になる。
マナミ う~ん、どうして、そんなことが言えるの?
マサシ うん、それなら、どうして、理由が必要なの?
マナミ 彼方の考えは、自分の考えと、矛盾するから。
マサシ それは、現在の関係しか、捉えてないからさ。
陰陽を介して、因果を解すと、時間が流れる。
マナミ つまり、局所を捕えれば、矛盾するものも、
時を介し、大局を捉えれば、補完するわけね。
マサシ 現在、君の考えは、僕の考えと一緒になった。
過去の考えと、現在の考えは、補完してない?
マナミ 確かに、私の時の中で、矛盾なく存在できる。
マサシ ほら、時間を介せば、関係は移り変わるのさ。
マナミ ……………………!!
CASE 相生 の先に 相克
サトミ 森羅万象の型、五行って、どういうものかな?
メグミ 五行とは、木、火、土、金、水のことなのよ。
サトミ 木生火、火生土、土生金、金生水、水生木。
隣り合う、相生の関係って、どんな関係かな?
メグミ 例えば、木が燃えると、火が生じるような、
五行が、五角形を描いた、理に従がう関係よ。
サトミ 木剋土、土剋水、水剋火、火剋金、金剋木。
向い合う、相克の関係って、どんな関係かな?
メグミ 例えば、木が育つほど、土が痩せるような、
五行が、五芒星を描いた、理に逆らう関係よ。
サトミ 幾ら、隣り合う関係で、合理が生まれても、
いずれ、向い合う関係で、無理が埋まれるの?
メグミ うん、いくら、矛盾なき世界を造り上げても、
裏には、それと、矛盾する世界が作り上がる。
サトミ じゃ、世界は、どう造っても、不完全なの?
メグミ そうよ、世界は、どう作っても、不完全なの。
サトミ この、絶望的な結論に、どう向き合えば良い?
メグミ 大丈夫、理に捕われると、道が閉されるだけ。
ほら、理に囚われなければ、道が開かれるよ。
サトミ ……………………!!
CASE 相生 という 相克
アツシ たとえ、理に適っても、捕われない方が良い。
必ず、合理が生まれると、無理が埋れている。
サトシ う~ん、良く解らない、どういうことかな?
アツシ 君は、Aを選んだときに、非Aまで択べるか?
サトシ ううん、矛盾してしまうし、選ぶ訳がないよ。
アツシ Aを、条件とする世界が、表に生れるとき、
非Aを、条件とする世界が、裏に埋れている。
サトシ 表に、矛盾のない世界が、完成していくと、
裏側の、矛盾のない世界と、矛盾していくの?
アツシ ああ、合理が生まれると、無理が埋まれる。
サトシ 表だけ、巡り続けていれば、矛盾しないよね。
アツシ いや、表の因果を辿ろうとも、知らない間に、
いずれ、裏の因果に続いていく、仕掛がある。
サトシ なるほど、ということは、メビウスの輪だね。
表を辿って、知らない間に、裏に回っている。
アツシ そうだな、過去と現在で、自己矛盾を抱える。
サトシ そっか、合理に誘われると、矛盾を導くのか。
アツシ 実際、俺の論に導かれて、君は理を辿ったが、
まさに、辿り着いてみれば、反対の自分だな。
サトシ ……………………!!
CASE 相克 という 相生
アツシ たとえ、理に叶っても、囚われない方が良い。
必ず、合理が究められて、無理に極められる。
サトシ う~ん、良く解らない、どういうことかな?
アツシ 木は火を生み、火は土を生み、土は金を生む。
ここまでは、陰と陽が、相生的に表れている。
サトシ 利に従い、因と果が、協調的に進んでいるね。
アツシ しかし、現われた金は、隠れた木を克する。
サトシ なるほど、相生を積むと、相克に詰まるのか。
アツシ 木は土を克し、土は水を克し、水は火を克す。
ここまでは、陰と陽が、相克的に表れている。
サトシ 利に背き、因と果が、対立的に進んでいるね。
アツシ しかし、現われた火は、隠れた木に生じる。
サトシ なるほど、相克を徹すと、相生に通じるのか。
アツシ つまり、相生と相克は、理の感じ方と言える。
サトシ じゃ、理に利を捉えれば、理に害を捕えるし、
反対に、理に害を捕えれば、理に利を捉える。
アツシ ああ、理を究めていると、理を窮めていると。
サトシ そっか、今回の道理は、速やかに解かったよ。
アツシ それはな、今迄が無理に、捕われて来たんだ。
サトシ ……………………!!
CASE 相克なき相生 と 相生なき相克
サトミ 相生と相克、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 相手を生む、相生って、どういうものかな?
メグミ 相生とは、理を見とめて、利を認めることよ。
サトミ 相手を克す、相克って、どういうものかな?
メグミ 相克とは、理を見とめて、害を認めることよ。
サトミ 相生を望み、相克に臨まないと、どうなるの?
メグミ 相克なき相生なんて、唯の相侮に過ぎないよ。
サトミ じゃ、利を見とめても、害を見とめないの?
メグミ そうよ、利が過ぎるから、逆に害になるのよ。
サトミ 相克を望み、相生に臨まないと、どうなるの?
メグミ 相生なき相克なんて、只の相乗に過ぎないよ。
サトミ じゃ、害を見とめても、利を見とめないの?
メグミ そうよ、害が過ぎるから、正に害になるのよ。
サトミ 相生だけでは、逆さに巡り、法が淫れるし、
相克ばかりでは、廻りが滞り、法が乱れるの?
メグミ うん、相生と相克、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、相克を負い、相生を追っていくの?
メグミ そうなの、相生を介し、相克を解していくの。
サトミ ……………………!!
CASE 陰 陽 五 行 説
サトシ あのね、陰陽五行説って、どういうものかな?
マサシ それはね、利害の理を示す、最小の型なのさ。
サトシ 利を究めて、害に極まるのは、どうしてかな?
マサシ それなら、木とは、金に刻されるものだけど、
何を生むか、木から、相生を辿ってごらんよ。
サトシ 木が燃え、火が生じて、火で灰が造られる。
土の中から、金が掘られ、金で鋸が作られる。
マサシ こうして、木を刻すものを、木が生んでいる。
つまり、利が追われると、害に被われるのさ。
サトシ 害を極めて、利に究まるのは、どうしてかな?
マサシ それなら、木とは、金に刻されるものだけど、
何を刻すか、木から、相克を辿ってごらんよ。
サトシ 木が育ち、土が痩せて、土は水を止めるし、
水を掛けて、火は消され、火は金を溶かすね。
マサシ こうして、木を刻すものを、木が克している。
つまり、害が負われると、利に覆われるのさ。
サトシ これって、巡り廻ると、真逆になるってこと?
マサシ そうさ、この仕組こそが、自然の理なのさ。
それでも、巡り廻って、不自然に見えている。
サトシ ……………………!!