物語編
第二章 第二二話 物語編
第二章 順 と 逆
第二二話 矛盾が根付く と 矛盾が芽吹く
「かっ、貴様、ここに至って、詭弁を弄するか。」
『それは、異なことを、君の道理に従ったまでだ。
それとも何か、君の方こそ、詭弁を弄していたのか。』
『私には、君の心の闇が、手に取る様に見える。
師を助けたい一心で、理屈を捏ねてみたところが、
まさか、その屁理屈で、師を殺めることになるとは。』
『確かに、認め難い、これは、忌々しき失態だ。
しかし、君の言に拠れば、それを受け容れること。
それこそが、君子の秀でる所以、大徳の証だったな。』
『どうだ、認められるか、君は一人で立てるか。
認められるなら、徳を備えた、軍師として招こう。
認められないなら、道を騙った、咎人として裁こう。』
追い詰めていたつもりが、追い詰められていた。
何たることだ、たった、二手で覆されてしまった。
梯子を上らされて、梯子を外されるとは、この事か。
『私とて、人を育てることに、異論はないのだ。
本心を言うなら、才のある者を、殺したくはない。
しかし、それゆえ、口だけの者を、生かしたくない。』
理に長ける、私らしさを存分に引き出した後に、
逆に、策に溺れる、私らしさで心中を晒し上げる。
その上、説き示した仁をして、説き伏せられるとは。