物語編
第二章 第二五話 物語編
第二章 天上 と 天下
第二五話 一元を修める と 二元を治める
〈軽々しく、死ぬなんて、言うもんじゃないな。
どれだけの命を預かり、どれだけの命に支えられ、
君が、活かされているか、君は、知らされているか。〉
私を助け起こしたのは、それは美しい男だった。
美しさだけではなく、秘めた強さが滲み出ている。
弱り切った私には、誰かと尋ねるのが関の山だった。
〈君は私を知らないが、私は君らを知っている。
私は君そのものであって、君は私そのものである。
我が名は智徳、しかし、今の君には誰か解かるまい。〉
彼は、私について、一部始終を見ていたと言い、
さらに、師のことも、誰より知っていると加えた。
どうやら、智徳は、私の兄弟子と言うべき人の様だ。
〈今の君では、彼には勝てない、彼の名は法徳。
君と彼は、乱世に好んで生れ、治世を築いて来た。
今は敵として見えながら、ある型を創り上げている。〉
彼の話には、ところどころ、難しい処があるが、
何故か、道理を越えたところで、納得してしまう。
どうやら、法徳も、師の愛弟子と呼ぶべき者の様だ。
「それなら、どうして、師を殺そうとするのか。」
〈いずれ解る、君と彼は、言ってみれば陰と陽だ。
陰と陽が入り乱れ、乱世を彩った後、すべて分かる。〉